終天に巡り逢うⅣ (ページ25)

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『悲しかったよ。所詮私はその程度だったんだなーって』

「っ俺は、おまえだって助けたかった！」

『でも助けてくれなかった。それが事実でしょ？』

言葉に詰まる。
それは事実だから。俺は、Aを助けなかった。
それを、放棄したのだ。

彼女じゃない《家族》を選んだのだ。

『…ああ、勘違いしないでよ。別に兄さんのことは恨んでないし』

「…じゃあ、なんで」

『見ての通り、私は吸血鬼になった』

分かっていたことだが、それでも認めたくなかった。たった一人の妹が吸血鬼になったなんて。

『ロシアで吸血鬼になったんだ。…私の、一番大切な人の血で』

と、その表情はあの頃の真昼と同じくらい可愛くて、そして誰かに恋しているようなものだった。
どくり、と心臓が脈打つ。

「…一番、大切な人の血…だと」

『うん。その人の血で吸血鬼化したんだ』

「なんで…なんでそんな馬鹿なことを！！吸血鬼は誰も愛さないぞ！？」

『でも兄さんだって、吸血鬼になった真昼さんを求めたじゃない。助けようとした。それにあの人も兄さんのことを愛してたでしょ？まぁ、本当に純粋な吸血鬼なのかは知らないけどさ？』

「っ」

なんでAはそれを知っている？どこでその情報を手に入れた？近しい者以外誰も知らないことなのに。

『あの人はね…初めて…《私》を見て、欲してくれた人なんだ』

「…」

可愛らしくはにかんだA。
そんな表情をするなんて、俺は知らない。俺は見たことがない。
だって、彼女はいつも冷静で淡々としていて、感情を表に出さず、我が儘を言ったこともない。

だが、

＿＿＿＿一体それは、いつからだった？

それを認識すると嫌な汗が流れ、どくどくと心臓が速く脈打つ。

『この世界は私には生き辛くて、絶望で彩られた檻で…そして、兄さんはその檻に私を繋ぐ枷だった』

「っ」

枷だと言った。
Aにとって俺は、足枷でしかなったのか。
俺は、何も出来なかったのか？何故？俺は彼女の兄貴…家族なのに。

『…私だって頑張ったんだよ。柊の犬になって、ひたすら汚れ仕事をたくさんこなして…でもずっと兄さんはそれを知らなかったでしょ？知ろうとしなかったでしょ？』

「それは、」

『兄さんが高校で仲間を作ってぬくぬくと過ごしてる間、私はずっと独りぼっちだった。ロシアで、独りでずっと…柊の命令で殺しをしていた。ずっと、誰かの命を奪ってた。ずっと、誰かの《家族》を殺して…奪ってたんだよ。…兄さん』

「っ」