終天に巡り逢うⅣ (ページ15)

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誰もくれなかった言葉を、彼は意図も容易く私に与えてくれる。
私を見つめるアカは空虚なはずなのに美しく、熱く、煌めいて。
そっと瞳を閉じて頬に触れるウルド様の掌に擦り寄る。

『…』

いつまでも、ずっと、その言葉が欲しい。
この冷たい温もりが欲しい。
私はいつの間にか強欲になってしまっていて。もう、手放すことなんて出来なくて。手放してほしくなくて。

目蓋を上げてウルド様を見据える。

『さよならを、告げます』

「…ああ」

『この執着を、断ち切るために』

そうするために、ずっと彼と一緒にいるために、私はあの人を捨てる。この執着を過去にする。

『本当は少し、会うのは怖いですけど』

「俺がそばに居る」

『…はい』

「クルルには視察という名目で東京に行くことも伝えてある。あいつは渋っていたが…おまえのことにケリをつけに行くだけだからな。余計なことはしないと告げてある」

そりゃあクルルにとっては嫌だろうな。

『ありがとうございます、ウルド様』

「いや。１週間後だからな…用意しておけ」

「俺はどうします？待機ですかぁ？」

と、そこでルクさんが口を挟むとウルド様は視線を投げる。

「ああ。おまえはロシアに残れ。日本にはAと他数名で向かう」

「了解です。A、泣くんじゃないぞ？」

『泣かねーよ』

と睥睨しながら起き上がる。

「ははは。もう泣きそうなくせに何強がってんだか」

『はぁ？全然泣きそうじゃないですし。ルクさん目が悪くなったんじゃないですか？あーあドンマイ』

「うっわ。生意気」

『こういう性分なんでぇ』

「おまえほんとウルド様と俺との態度違いすぎない？」

『逆に同じなわけないじゃないですか』

「もう出て行けルク」

「えー。俺ですかぁ？俺なんも悪くないのに」

「出て行け」

と、ウルド様がもう一度言うとルクさんは肩を竦めて立ち上がる。

「分かりました。今からお楽しみタイムですね。ならお邪魔虫は消えますよ」

『は？』

ルクさんは扉を開けて部屋を出る。閉める寸前で顔を覗かせニヤッと笑いかけてきて。

「頑張れよ、A」

『何を！？』

「じゃ、失礼しましたー」

ばたん、と扉が閉まり沈黙が部屋を支配する。

なんとなく嫌な予感がして立ちあがろうとすれば、また視界が反転して。獰猛な色を宿したアカが私を見下ろしていて。

「…さて。では色々聞かねばならんな、A」

『え』

「安心しろ。優しく聞いてやる」

『え。優しく？…待っ！』