終天に巡り逢うⅣ (ページ14)

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長い指が俯いた私の顎を掬い上げて視線を合わされる。

「A。俺は別におまえになら過去を知られても構わない。俺は気にしない」

『、』

「そんな顔をするな。おまえは気にしすぎだ」

『…』

「そんなことよりも日本行きの件だ。A、おまえも連れて行く」

『！え』

「約束しただろう。会わせてやると」

それに瞳を見開く。
つまり私は、兄さんに会えるのだ。
震える唇を開く。

『兄さんに、会っていいんですか…？』

「そうしなければおまえは完全には俺を見ないだろう。いつまでも《家族》に囚われたままだ」

ウルド様の言う通りだ。私は《家族》に執着心を抱いている。それを昇華しないときっとずっと、囚われたままだ。

「だから連れて行く」

『…ありがとう、ございます』

「よかったな、A」

だがそれにほんの少しの期待と恐怖のようなものを感じる。
あの人は私が生きてることを喜ぶだろうか。
…いいや、きっと驚いて、そして何故と言うだろう。だって私は死んでいるはずの年齢だったから。

『ぅ！？』

突然ぐい、と腕が引っ張られる。
視界に映る天井とウルド様の顔。

『ウルド様？』

「そんな顔をするな。もしおまえの兄がいらぬ事をしたなら排除してやる」

『…やめてくださいよ。手を出さないでください』

「おまえをぞんざいに扱った奴なのに？」

『別に…分かってたことですから。私なんてあの人にとっては取るに足りない存在だってことくらい』

「見る目のないやつだ」

『そういうものですよ。誰だって異物が嫌いでしょう？』

は、と嗤う。
人間というものは、自分と違うものを厭う。嫌う。疎う。

「まぁ確かにな」

『…』

「だが、俺をそんなものと同列に並べるなよA」

私を見下ろすアカが細められる。

「俺はAを欲した。選んだ。それは覆しようのない事実だ。それは分かるな」

こくりと頷く。

「ならば、少なくとも俺がおまえを認めているということをきちんと理解しておけ。自分を卑下にするな。分かったか」

『、』

躊躇いが生じる。
ずっと自分に価値などないと思って生きてきたのだ。そう簡単に考え方は変えられない。多分それはウルド様も分かってくれている。だから理解しておけと言ってるんだろう。

「…俺にとっておまえの生まれも育ちも関係ない。A自身に惹かれたんだ」

『、はい』

「考え方はそう簡単には変えられないだろう。だが、おまえには俺がいるということを絶対に忘れるな」