終天に巡り逢うⅣ (ページ8)

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「永遠の時を生きてきた。不毛で退屈な時間。孤独と空虚に苛まれる時間を」

『…』

「リーグも消えた。父も消えた。すると、感情は更に減衰した。だが、彼らを探して捕らえると決めていた。生きてきたのは、それだけが理由だった。それ以外の何者にも興味も執着も持てなかった。…だが、」

ウルド様の両手が私の頬に添えられる。

「Aに出逢った。俺は、おまえに酷く惹かれた。焦がれた。欲しいと思った。手放したくないと思った。…愛しいと、思ったんだ」

『っ、』

「今はまだ、気持ちに整理がつかないとしても…それだけは分かってくれ」

吸血鬼になったのに、胸の奥が苦しくなる。
分かっているのに感情が私を揺さぶる。瑚月を喪った喪失感と、ウルド様の優しさが苦しい。

『っぅ…』

「大丈夫だ」

そう、抱き締められて。

『、…私を、…私と、ずっと一緒にいて…』

「ああ」

『好きなんです…好きだから…もう、戻れないんです…』

「ああ。大丈夫だ。俺は、絶対におまえの側を離れない。おまえを残して消えたりしない。約束する」

背中に回した手で、縋り付く。
瑚月を喪った、この喪失感は私を苛む。…でも、ウルド様が側にいてくれるなら。

_______ああ、渇く。

『っ』

急に襲い掛かる飢え。
はっ、と息を吐いた私の様子に気付いたウルド様が少し身体を離して襟元を寛げると露わになる、それを凝視する。
その皮膚の下に流れるアカイモノが欲しいと本能が告げている。

「A」

私の名前を呼んだウルド様を見上げる。
促すような眼差し。

『…っ、』

ホシイ。ホシイ。そのアカがホシイ。
止まっているはずの心臓が激しく脈打つような錯覚。
飲もうとしない私に焦れたのか、ウルド様は自分の手首を噛み、溢れた自身の血を口に含む。

『うる、』

そして、口付ける。
口内に入り込んだアカが喉を通ると、箍が外れた。
ウルド様を押し倒し、唇を離して彼の首筋に牙を穿つ。
ただ、ただ、血を啜る。

ああ、なんて、甘美な________

『っ』

牙を抜いて口元を手で覆う。
紛れもない吸血鬼の性を身をもって感じた。これが、吸血鬼として生きるということ。
自分の瞳は、何もかもを鮮明に映しているのにそれに何も感じない。美しいであろう光彩を放っているのに、何も感動しない。

でも、

「A」

『ウルド様』

目の前にいるこの人だけは、ひどく心を揺さぶられる。心が彼を渇望している。
美しいと、愛おしいと、欲しいと、感じる。