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「ウルド・ギールスにキ・ルクよ。その子のことを、頼んだぞ」
「おまえに言われずとも」
「ま、お守りくらいはしてやるよ」
『いやちょっと待て』
その言葉にふと笑い、Aを見下ろす。
キ・ルクの言葉に不満げな彼女はルクを睥睨していて、それを面白くなさそうな表情でウルドが見て、そして腕を引いてAからルクを離す。
ーこげつ！
かつて、彼方の世界でたった一人自分を見つけて笑いかけてくれた大事な人の子。
ー瑚月。
いとしい愛しい、たった一人の、俺の《家族》。
そしてこの世界で唯一、俺の《神殺し》の力を継ぐ存在。
果たしてその力が彼女にどう適応するかは分からないが…だが、この子ならば巧く使いこなすだろう。
瞳を細め、ゆるりと笑う。
「A。俺の力を巧く使いこなせよ。それは諸刃の剣だ。使い方を間違えれば、そなたの身が危うくなる」
『…分かった』
「よろしい」
ふ、と息を吐く。
『…こげつ、』
「ははは。なんという顔をしておるのだA」
『元々この顔だ』
「捻くれるでない。笑え、A。俺はそなたの笑顔が見たい」
『…』
そう言うとAは涙を堪えるようにきゅ、と唇を噛み締めてから俺を見つめる。
「大丈夫だ。…もうすぐ俺はそなたの側には居なくなるが、俺はいつだってAと共に在る。俺はAの力となる」
『…』
「俺のために泣いてくれるのは嬉しいが、胸が痛むのだ。…だからどうか笑ってくれA。俺の愛しい子よ」
苦しそうな顔や、辛そうな顔ばかりを見てきた。
最後に彼女の本当の笑顔を見たのはいったいいつだったか。
「俺はいつだってそなたを想う。そなたの幸せを願う。そなたの笑顔を乞う」
『瑚月、』
「だから、どうか…A」
きゅう、と何かに耐えるように唇を噛み締めてから、彼女は力を抜く。
『…ねぇ、瑚月』
「うん？」
『…ずっと、一緒に居てくれてありがとう。守ってくれてありがとう。《私》のことを憶えていてくれて、ありがとう。私を《家族》だと言ってくれて、愛してくれて…っありがとう…瑚月…！』
震えた声と共に言われたその言葉に微笑むとAの腕を引き、小さな身体を抱き締める。
もう二度と触れることのない温もりを、永劫に忘れないように。
「俺の方こそ、有難う。そなたが居たから、終天までの刻を生きていられたのだ。…これからも俺はそなたを見守っている」
もう時間がない。
伝えなければ。
「…愛しているぞ、俺の愛し子よ」
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作者名：クウ | 作成日時：2022年4月5日 20時
