終天に巡り逢うⅣ (ページ34)

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１８３ー第１部完結ーページ34

「俺なしでは、生きられないようにしなければな」

低く妖艶な、それでいて獰猛な加虐心の宿った声に、ぶわっと全身が粟立った。

『…いや、えっと…』

「おまえがそう望んだんだ。こちらとしては、叶えてやれねばな」

『えっと…あの、』

「楽しみだな？A」

と、私の耳朶を甘噛みして口角を上げるウルド様の姿がもう…色気がもう…無理。

『…お、』

「…」

『お手柔らかにお願いします…？』

「安心しろ。大切なものには優しくするタチだ。…だがまぁ、A次第でもあるがな」

その言葉に、危険信号が私の中で鳴り響く。
これ、一手間違えたら大変なやつじゃない？大丈夫かな…私。

「帰るぞ」

『…はい！』

前の世界からこの世界へと、そして滅亡した世界を巡って、終天まで共にする貴方と逢えた。
生きる希望も意味も理由も持てなかった私に、貴方はそれらを与えてくれた。
きっと私は貴方に出逢うために、《この世界》を生き抜いて来たのだ。絶望から掬い上げてくれた貴方となら、私はこの終天の世界で、最後まで一緒に生きられる。

否、生きていきたい。

『ウルド様』

「…」

美しいヒトが私を見下ろす。

『ずっと、一緒にいてくださいね』

「ああ。逃げようとしても、逃してやらないからな」

『あはは。ウルド様なら囲われるのもいいですね』

「言ったな？」

『常識の範囲内でお願いします』

「吸血鬼に常識を問うとはな」

『ウルド様は生真面目な常識人じゃないですかぁ』

「どうだかな。常識人である前に、一人の男だ。愛する女を前にすると、理性が働かないかもしれんな」

『えー。そんなぁ』

「嫌か？」

悪戯げにウルド様は私に問う。

『ウルド様になら…いいですよ』

「そうか」

『はい。あ、でも優しめにしてほしいです』

「善処しよう」

『言いましたよ？聞きましたからね？言質取りましたよ？』

「さて。全てA次第だろう」

『もぉ。結局そうなるんじゃないですか』

笑って、抱き付く力を強くする。

『ウルド様。大好きです。世界で一番、誰よりも貴方を愛しています』

すると天に掲げるようにウルド様は私を持ち上げる。
不安定になった身体のバランスを取るために彼の両肩に手を置くと、ウルド様は口を開いた。

「ただ一人おまえだけを永遠に、永劫に、守り、愛し、そばに居ると誓う。

愛している、A」

酷く優しくて実直で、温もりと愛情の宿ったその言葉と眼差しと共に、ウルド様は私の唇を塞いだ。