終天に巡り逢うⅣ (ページ19)

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「は、放してください！」

一人の子供が吸血鬼に首を掴まれ持ち上げられている。苦しそうな表情でもがくその子供。

「家畜如きが…私の服を汚しおって」

「ご…ごめんなさいごめんなさい！わざとじゃな…」

「黙れ家畜」

聞く耳を持たないその、吸血鬼。

『下っ端のくせにいきがって、楽しそうだなあいつ』

「あれ？助けないの？」

『何故私が？』

「君のお兄さんなら助けるよ？」

『だろうね。でも私は、兄さんのように優しくもないし甘くもない。あの子供が本当に服を汚したなら、その報いだな』

「あはっ。正反対だね」

フェリドは楽しそうに笑う。

『…誰かが助けてくれるなんて、考えない方がいいんだ。そんなのは、ただの幻想だよ』

「それは君の経験談かい？」

『…いや。私は助けられたからねぇ』

そう笑って、少し瞼を伏せる。

『…』

「何をしている」

不意に聞こえる声。まだ幼さを残したその声は、その場を支配した。
声のする方を見れば一人の少年が吸血鬼を睨み付けていて。

「その子を離せ」

「…女王陛下のお気に入りか」

「…その子を離せと言ってる」

「気に入られているからと図に乗るなよ」

気に入らないのか、男は少年を睨む。

「あはぁ。君たち何をしているんですかぁ？」

そこでフェリドが口を挟んだ。
男も、少年も、そして子供もこちらを見る。

「君、その子を離してあげてくれるかな？」

「…は」

ドサリと落とされる。
集まった吸血鬼たちに恐怖の眼差しを向けるその子。

「わぁ。美味しそうな子だね」

「っひ」

「怯えちゃってかわいいなぁ」

ニコニコと笑うフェリドは子供に手を伸ばす。そこで、

「やめろ」

その腕を掴んだ少年。

「なんだい？ミカ君」

百夜ミカエラ。
クルル・ツェペシの血を飲み吸血鬼化したその天使が、目の前にいる。

「直接血を飲むのは禁じられているはずだ」

まだ少年の域を出ていない子供の声が響く。

「あは。真面目ぶっちゃって〜ねぇ？Aちゃん」

『知るかよ』

青い瞳が私を見据え、大きく見開かれる。
自分と同じ、瞳の色が変わっていない吸血鬼を見て驚いたのか。

「まぁいいや。ミカ君、僕の屋敷に来てお喋りしないかい？」

「誰がおまえなんかと」

「え？ミカ君ったら僕とそんなにお話したいの？わぁ、嬉しいなぁ！でも僕はAちゃんとお喋りしようよって言ったつもりだったんだよーん♪」

超ウザいなコイツ。
ミカエラも鬱陶しそうな表情を浮かべる。