終天に巡り逢う (ページ8)

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『…』

今までと違い、ふかふかのベッドで寝転びながら天井を見上げる。
ウルド様に与えられた部屋は豪勢過ぎてそわそわする。というのかいいのか、こんなことして…と思う。特別は作るべきじゃないと思うのに。何を考えているのだろう、と考えて頭を振った。

『吸血鬼の考えることはよく分かんないな』

しかも、ウルド様って第二位始祖だろ？ほぼトップじゃないか。第一位始祖は今いないらしいし。…長生きし過ぎて耄碌したのかな。あの人何年生きてんだろ。見た目は超イケメン！でも中身はお爺ちゃん！その名は第二位…、…違うな。

…まぁ本人に言ったら殺されそう。不敬である。

『んー…』

だが、何故だろう。警戒心を抱くべきなのに、そこまでそれを抱かないのは。相手は吸血鬼なのに。捕食者なのに。
害意や悪意を感じないからだろうか？よく分からないな。
でも、適切な距離は取らなければならない。所詮彼らは人間である私とは相容れないのだから。

それに、私の部屋が彼のものと近いのは監視の意味もあるのだろう。何者かと会ったとしても、この部屋なら彼の耳に聞こえるはずだから。
ベッドから降りて、ペタペタと音を鳴らしながら部屋を歩くと窓枠に腰掛ける。

『…にいさん、は元気かな…』

あの人と生き別れてから、もう５年が経った。
生きているだろうか。この荒廃した世界で。

…いやきっと、生きている。あの人は、そう簡単には死なない人だから。それにあの人は"主人公"だから。
今もきっと、吸血鬼やヨハネの四騎士と戦っているだろう。きっと大丈夫。あの人は生きている。生きて、運命に抗っているのだ。大切な人達の為に、戦っているんだ。
その中で…私のことをほんの少しでも、想ってくれているのだろうか。
なんてくだらないことを考えて嗤う。

『…はぁ。…感傷的だな…』

急にどうしたんだろうか。心をコントロールしなければ。じゃないと、心が死んでしまう。
…でも、誰にも頼れず、知り合いもいない。一人は寂しくて孤独だ。
そんなところに強大な保護者？がついてしまい、心が動いたのかもしれない。

『あー。駄目だな』

瞼を伏せて深く息を吐く。

心を殺せ。

感情を殺せ。

隙を殺せ。

_______ここは、敵地だ。周りは皆、敵だ。

『…よし』

瞼を上げる。
もう、心の騒めきはなくなった。大丈夫。私はやれる。何も問題などない。いつも通りだ。

『明日から頑張るか』

そう呟いて窓の外に視線を向ける。

そこに、空はなかった。