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口々に叫ばれるそれを気にした素振りもなく、Aは足元の男が邪魔だと言わんばかりに足で転がす。
『口先だけならなんとでも言える。私のことを殺したいならさっさと掛かって来いよ』
「っ」
『全員、殺してやるから』
本当に、彼女はそうするつもりだ。
あの人間どもを一人残らず殺そうとしといる。
『何故かかって来ない？今更怖気付いたのか？』
「う、うるさい！！」
『他人に殺される覚悟もないくせに、よくもまぁ私に喧嘩を吹っかけてきたな。私が何も言わないとでも思ってたのか？馬鹿だな』
「だってあんたは一瀬じゃない！！」
と、女が叫ぶ。
「一瀬はそういうものでしょ！？私たちから見下されるためにあるんじゃない！！」
「そうだ！！おまえら一瀬は柊家の温情で生き延びただけだろ！！」
「おまえなんかには何の価値も無い！！ただのクズの分際で！！」
それに眉根を寄せる。
奴らの言葉から察するに、彼女の生家は相当酷い扱いを受けてきたらしい。
『はぁ…』
と、溜め息を吐いたA。
『…どいつもこいつも、…鬱陶しい』
「…ぁがっ！？」
女が喉を押さえて倒れ込む。
「何をした！？」
『幻術。早く解かないとそいつも死ぬよ』
「なっ！？」
『このレベルの幻術も解けないわけ？はは。無能だなぁ。クズはどっちだよ』
「なん…っが！？」
今度は男の懐に入り、顎に向けて掌底を放つ。なす術もなく攻撃を受けた男は倒れ込み、それを踏みつけた彼女は一度こちらを見て、そしてまた冷たい視線を戻す。
「なんて野蛮な家畜なんでしょう、ウルド様」
いつの間にか私に寄り添うように側に来ていた女ーアリシア・ヴァーデンを一瞥する。
「あんなもの、汚らわしいですわ。貴方様のお側に置く必要なんて…」
「黙れ」
と、言えば女は身体を揺らして口を噤む。
「私の側に誰を置くか…それは私が自分で決める。何の関係のない貴様が余計な口出しをするな。不愉快極まりない。消えろ」
「っ！！」
顔を紅くして去っていくのを見ることもなく、Aを見つめていたが、口を開く。
「アリシア・ヴァーデン」
「！はっ、はい！」
嬉しそうな声。背中に突き刺さる視線。そのどちらにも不快感を感じる。
「Aに手を出せば、殺す。覚えておけ」
「っ！！失礼致しますわ！」
くだらぬプライドでも傷付けられたのか。いきり立ちながら奴は去っていく。
だが、もしアイツがAに何かしようものなら私は絶対に許さない。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
