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「じゃあなんでウルド様はアイツのことが気になるんです？」
「…分からない。ただ最初は、彼女からリーグの匂いがしたから側に置いていた」
そう。Aからはウルド様と同じ第二位始祖だったリーグ・スタフォードの匂いがするのだ。何故かは分からない。彼女はその理由を知っているのだろうか。
「リーグの手先なのかと思っていたのだが…」
「そうは思えない？」
「ああ」
まぁ確かにそれは同感だ。
俺もリーグの駒なのかと思っていたのだが、どうやら違うらしい。こちらのことにまるで興味が無い。
ただ与えられたことを真面目にこなしているようだったし、変な行動をしている素振りが全く無かったのだ。
「…変な感じだ」
「…」
瞳を伏せて彼は呟く。
「こんなものはとっくに無くなったと思っていた。…誰かを、側に置いておきたいなんて」
「…俺らはそういう感情が失せますもんね」
「ああ」
誰かを好ましく思ったり、側にいて欲しいなどと思う心は消えてしまう。なんなら他の奴らと仲が悪いくらいだ。それが吸血鬼というものだから。
なのに、Aはそれを覆した。
彼女はそうなることを望んで行動してきたわけではないだろう。むしろ、放っておいてほしいと感じているはずだ。彼女は干渉されることを嫌う節があるから。だが、それはいったい何故なのか。
「…特別だと、伝えた」
「へ、」
「私がいまAに対して持っている感情が、果たして本当にそうなのかは分からない。だが…、それでも恐らくはそうなのだろうと思っている」
まじかー。
と、内心驚いた。
まぁ俺も恐らく彼が持っている感情はそういう類のものなのだろうと思ってはいたが…だが随分とアッサリ認めたな。何故だろう？…いや、逆にそれしか考えつかなかったのか？そして、それがしっくりきたと。
「ただ、Aはそれを拒絶した」
「…あー…」
有り得そうだ。彼女は自分の領域に踏み込まれることを嫌うから。独りを好むところもあるし。
「まぁ…うーん…ゆっくりやればいいんじゃないですか？アイツは警戒心バカ高いから、一気に距離を詰めようとしたら絶対に勘繰って遠去かりますよ。じわじわ追い詰めることをオススメします」
「そうだな」
まさか彼がAに対してそういう感情を持つとは。
長生きはしてみるもんだなぁ。うん。
と、どこか柔らかい表情ではあるのに、その瞳は獲物を狙う捕食者のように獰猛に光らせながら頬杖を突いているウルド様を見て、小さく笑った。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
