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「貴方、その子のことがずいぶん気に入ってるのね」
「気紛れだと言っただろう」
「あらそう？そうは見えないけど」
揶揄うようなそれにウルド様の眉尻が釣り上がる。
「戯言を言うならどこかへ行け」
「まぁ怖い。A…ウルドに捨てられたら私のところに来なさい。拾ってあげるわ」
『はぁ…どうも』
怖いもの知らずだな、クルル様。明らかにウルド様をおちょくってるよ。
…て、いたたたた！また力が強くなった！
「また話しましょう、A」
『あ、はい』
「話さなくていい」
どこかむすっとした表情で吐き捨てたウルド様が、私の腕を引いて歩き出すのに足をもたつかせながらも慌ててついて行く。
かつかつかつかつ、といつもより音を立て速めに歩いているウルド様はめちゃくちゃ機嫌悪そうだ。なんてことをしてくれたんだ、クルルさんよ。
バンッと自室のドアを乱雑に開け、続きの部屋に向かうと私をベッドに放り投げた。
『っ』
私に覆い被さり、見下ろすウルド様の威圧感が…とか言っている場合じゃない。殺されないだろうか。
『あの、』
「ずいぶんクルルと親しそうだったな」
『へ？いや別に親しくはないと思いますけど』
「…何を話していた」
探るような眼差し。さて。どう言うべきか。
『日本に戻りたいなら連れて行ってやろうか？って言われてたんですよ。寛大ですよねぇ』
「寛大ではない私への嫌味か？」
『いやいや、そういう意味じゃないですよ。言葉の綾ですって』
「そんなに日本に帰りたいのか」
冷たい瞳が私を見下ろす。
『…日本に未練はないと、』
「だが兄には会いたい」
『…』
ぎり、と掴まれている手首に痛みが走り、顔を歪める。
『…なんなんです。何故イラつくんですか。私がどういう想いを持とうとも、貴方には関係ないでしょう』
「ああ、そうだ。関係ない」
『なら、』
「だが、不愉快だ」
私の言葉を遮りそう言うウルド様に怪訝な表情を浮かべた。
「そう、不愉快だ。おまえは私のものだ。私の所有物だ。何故他を考える。何故他に懸想する」
加減もされず、ぎりぎりと掴まれる手首が悲鳴を上げる。
『…は。まるで玩具を取られて駄々を捏ねる子供みたいですねぇ』
「なんだと？」
ぎりり、と更に強く握られる。
しかし私は薄ら笑いを浮かべた。
『そうでしょう？貴方は私がクルル様に取られるのが嫌で不愉快なんですよ。だって自分の所有物だから』
「…」
あは、と笑って言葉を淡々と続ける。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
