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『ふっ』
ウルド様の屋敷内にある中庭で、素振りをする。
やっぱり修練は必要というか、習慣なのでやらなければ気持ち悪いんだよなぁ。いやぁ、慣れって怖いな。
「A〜」
『!ルクさん』
よ、と手を振ってこちらに向かって歩いてくるルクさん。
普通にさん付けしてるが、本来なら首ちょんぱの刑だ。まぁ、ルクさんがいいって言ったからそう呼んでるんだけど。
「何してるんだ?ていうか、"ルク兄"だろ?」
後半を無視する。
『素振りを。身体鈍っちゃうし』
「あー。おまえ武術出来るもんな」
じ、と私を見下ろすルクさんを見上げる。
すると、にや、と笑みを浮かべられ、ぞっと背筋が粟立つ。
「俺と手合わせしろよ」
『死ぬ』
「殺さねーよ。ウルド様のお気に入りなのに」
『死ぬ…無理ゲーだろ…』
「暇つぶしだって。ほら」
『そもそも私の武器が棒切れなんですけど…』
と、手の中にある棒切れに視線を向ける。
…今度ウルド様に真剣欲しいですって言ったらくれるかな?
「早くしろよー」
『あーもー分かりましたよ』
す、と構えを取る。そして地面を蹴り付けた。
鋭く、速く、棒切れを振り翳す。
が、ルクさんは容易く避ける。が、それは予想の範疇。追撃の手を出していく。
「ほらほらーそんなんじゃ俺に傷一つ付けられないぞー」
『は…腹立つ!!』
あれかな。あれ使っても大丈夫かな。よし、ウルド様に怒られたらルクさんのせいにしよう。
「ほーれほ…」
『起爆』
ドンッと小規模の爆発が起きる。ルクさんがそれを避けた。
だがそれも予想の範疇。だから次を繰り出す。
『起爆。起爆。起爆』
ドンッドンッドンッ。と次々と爆発させる。
それと同時に幻術も発動させておいた。消音呪符は既に貼り付けてあるから問題あるけどないだろう。幻術で聴覚を奪い、土煙でルクさんの視界は奪った。
彼の背後から棒切れを振り翳す。
ーパシッ
「…おまえ、なに爆発させてんだよ。ウルド様に怒られたらどうすんだよ」
『ルクさんのせいにするに決まってるじゃん』
「えー。俺のせいかよ」
『手合わせしろって言ったのそっちじゃないですか』
しかし簡単に、私の攻撃を止めたルクさん。
無意味だったな…と少々むくれる。
「まぁ、筋は悪くない。太刀筋も悪くない。呪符を使った戦術と幻術だって、吸血鬼相手じゃなかったら効いてた」
『本当かなぁ…』
「本当だって」
ぽんぽん、と頭を撫でられていると、カツン…と靴音が響いた。
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作者名:レイ | 作成日時:2021年5月2日 22時