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『はひゃひてくらひゃい』
「面倒なことにならなきゃいいんだけどなぁ」
『ひひぇよ』
私の頬を引っ張りながら溜め息を吐くルクさんに私が溜め息を吐きたい。絡まれる当事者だぞ。
「…真面目な話、おまえ気を付けろよ」
『…』
パッと手を離してそう言うルクさん。
『でもぶっちゃけどうしようもないですよね』
「おまえ一人じゃなぁ。ウルド様も俺も、いつだって見てられるわけじゃないし」
『…』
「おまえがウルド様のものだって言っておいたけど、絶対アイツ逆恨みしてそうだよな」
『…いや絶対してますね。見ました？あの顔。めっちゃ怖かった』
「なんでおまえはそんなに絡まれるんだよ。大人しく出来ないわけ？」
『大人しくしてるでしょ。大人しくウルド様の手伝い頑張ってるじゃないですか』
「それも気に食わないんだろうなぁ」
『じゃあどうしろと』
どうしようもないんですけど。
と思わず遠い目になる。
うーん、と唸っているルクさんが不意に後ろを振り向く。それに倣って私もそちらを見れば、ウルドが歩いていた。
「…何をしている」
眉根を寄せて私たちを睨み付けるように見てくる。
「あー。ちょっと面倒なことが」
「面倒？」
嫌そうな声である。
「アリシア・ヴァーデンがAに突っかかってたんですよ」
「…あの女か…」
眉間の皺を更に深くして鬱陶しそうに呟いたウルド様が私に視線を投げる。
「何かされたか」
『いえ、特には』
「ウルド様の側から消えろ的なことを言われてましたよー」
『…』
「…」
すっと視線を逸らす。
私なんも悪いことしてないのになんで私が居心地悪くなるんだよ。
『私はウルド様の所有なので自分にその権限は無いと言いました』
「それでいい。アレのことは相手にするな」
煩わしそうな表情で頷くウルド様だが、こんなにも分かりやすい顔をしているのは初めて見た気がする。
あらら。アリシアさん、貴女ちょっとウザがられてるよ？何したの？アタックし過ぎたのかな？押してダメなら引いてみろした？
『別に私は相手にしたくないんですが、もしあっちが絡んできたら…』
そこまで言ってハッとする。
やばい。言い方がマズった。吸血鬼に対する言い方じゃなかった。
「まぁ、そうだろうな」
「アイツ、全然懲りないからなぁ。ウルド様に冷たくあしらわれてるのにさ」
なにそれアリシアのメンタル強い。鋼かな？
私の失言を気にした素振りもなく二人は面倒臭そうな表情を見せる。
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
