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『…』
コイツさぁ…控えめに言って馬鹿なの？私はウルド様の所有だって言ってんのに、自分からサヨナラ出来るわけないだろ。出来るならとっくにしてるわ。
いきり立つ女に呆れしか感じない。
コイツ、自分のことばっかだ。感情論だけでしか話してなくて客観性がないし。私よりずっと歳上なんだからもっと落ち着けよ。
「聞いているの！？」
『はい』
「家畜風情が…っ！！その生意気な顔をするのをやめなさいよ！！」
手が振り上げられる。
それは避けられない。私にそこまでの力はない。死ぬのかな。
なんて、ぼんやりと考えながらそれを見つめる。
ーパシッ
『！』
「！」
その腕を後ろから誰かが掴む。
「…ぁ…ルク様…っ！」
それはルクさんだった。
彼にしては珍しく無表情で女を見下ろしている。
「おまえ、何してる」
「…っ私はこの家畜に身の程を弁えろと！」
「おまえにその権限は無いだろ。コイツはウルド様のものだぞ」
その言葉にまた女はいきり立つ。
「っ！！何故ウルド様はこのようなものをお側に置いているのですか！？」
「知るか。ていうか、おまえには関係ないだろ。いい加減にしろよアリシア・ヴァーデン」
ウルド様LOVE女はアリシア・ヴァーデンというらしい。
彼女の後ろに居るルクさんと視線が合うと同時に、ボキッという音が聞こえた。
うわ腕折ったよ、この人。
なんて冷静に分析する私の前でアリシアは顔を歪め、彼女の腕を離すとルクさんは冷たく言う。
「失せろ」
「っ！…失礼致します！」
キッ、とこちらを睨み付るとヒールの音を荒々しく鳴らしながら去って行った。
「…何かされたか？」
『いえ別に何も』
「…」
ジロジロと私を上から下まで眺めてから納得したのか頷くルクさん。
まぁ事実何もされてない。
それにしてもあのアリシアとかいう女、私の匂いには気付かなかったみたいだ。第八位には分からないのかな。上位始祖にしか分からないのだろうか。フェリドは除くが。
「おまえさー。なんでそう絡まれ易いわけ？そういう星の元に生まれたのか？」
『嫌過ぎる』
「よりによってアイツかよー。面倒なのに目付けられてさぁ」
『あの人ウルド様ガチ勢ですか？』
「うん。ウルド様とは別の第二位始祖に、ウルド様に恋する所を見て面白半分に吸血鬼化されたんだと」
『…面白半分ってさぁ…』
アイツまじブッ殺。
思わず真顔になる私に手を伸ばして頬を引っ張ってくる。
「おまえ、ほーんと不幸体質だな」
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作者名：レイ | 作成日時：2021年5月2日 22時
