終天に巡り逢う (ページ15)

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風呂から上がり、濡れた髪をタオルで水気を取りながら先程のウルド様の行動を思い出す。

何故わざわざ私を連れ帰ったのだろう。放っておけば良かったのに。風呂まで沸かさせて、タオルも渡してきて。

『…』

煩わしそうな表情を浮かべるくらいなら、捨て置けばいいのに。たかが人間一人死んだくらいじゃ、別に痛手はないはずだ。
それともやはり、私のことが怪しいから？…それならさっさと拷問なり何なりすればいいだけの話だろう。

…だから、意図が読めない。彼は何を考えている？何を引き出そうとしている？
何故、わざわざ人間の小娘に自身の屋敷の一室を与えた？その真意はいったい何だ？

…分からない。読めない。

きゅ、と唇を噛み締める。
嗚呼…不快だ。仮初の優しさなど要らない。戯れに私を利用して欲しくない。それなら最初から痛め付けて吐かそうとされる方がずっといい。

『ちっ』

と口悪く舌打ちしてタオルを放る。
気持ち悪い。反吐が出る。鬱陶しい。煩わしい。
なんてくだらない。なんて滑稽。そんなものに振り回されるなんて。そんなの私らしくない。

誰も信じない。誰も頼らない。それが私の生き方だ。

『…』

スッと目蓋を下ろす。息を整える。心を鎮ませる。
胸の奥をざわざわと騒めかせる、くだらない感情から自分を切り離す。
そんなものは私に必要無いのだから。生きていく上で不要なものだから。

『…ふー…』

深く息を吐いて、それらを完全に捨ててから目蓋を上げた。

『ははっ。いやぁ…大変だなぁ』

と笑う。
まぁ美味しいご飯とお風呂が付いてくるのは儲けものだろう。利用出来るところまで利用するだけだ。彼らも私が様子を伺っているのは当然分かっているはず。だから、これからも駆け引きが続くだろう。
私が喰うのか喰われるのか。

『私は生き残れるのかな？…まぁ別にどっちでも良いんだけど』

自分の生に執着など無い。今こうして生きているのも偶然が重なっただけ。

『…』

私の生に意味など無い。そんなものは最初から無かったのだから。異端分子である私には。物語の中には入れなかった私には。

ー私は濡れても何の支障も出ない。だがおまえは違うだろう。

だから、まるでこちらの身体を気遣うようなそれに戸惑った。

『…寝よ』

ぼふっ、とふかふかの布団にダイブして目蓋を下ろして視覚を遮断する。
ぷつり、ぷつりと感情の糸を切り落としていく。
何も考えないようにして、自分の意識を暗闇の中へと堕とした。