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3週間程が経ち、ウルド様に連れ出された私は、ぼーっと空を見上げながら歩いていると急に立ち止った彼に反応しきれず彼の背中に頭突きをしてしまった。


『っすみません』


す…と私を見下ろすウルド様。

あ、やべ、怒る?どつかれる?死ぬ?

と思うも特に何も言われず前を向いて歩き出した。


「おまえはいつ、ロシアに来た」


不意に声を掛けられる。


『へ?えーっと、5年前ですかね』

「何故ロシアに来た」

『ロシアの呪術学校に留学を』

「何故わざわざロシアを選んだ」

『え。えー、いや、特にこれといった理由はないんですけど』


なんだこれ、尋問されてる。何が聞きたいのかな。


『でもロシアの呪術に興味があって。父に無理言って交渉してもらったんです』

「そうか」


半分本当で半分嘘だけど。


『日本の呪術とはまた違っていたので、面白かったですよ』

「そうか」


……。


ん?待って。聞いておきながら絶対興味ないな、この人。
心の中で突っ込む。


「日本に帰りたいか」


と、立ち止まって私に視線を向けて聞いてくる。
何を考えているのか分からないその瞳を見つめ返しながら、少し考える。


『…日本自体に未練はありませんが…』

「…」


ーーーA。


脳裏に浮かぶ、兄の姿。ぶっきらぼうで、意地悪で、でも本当はとても優しい、その人。


『…家族に会いたいとは…、思います』

「…そうか」


そう言って再び歩き出すウルド様の後ろをついて行く。
何故そんな質問をしたのだろうか、ウルド様は。
よく分からない。


『…』


家族。兄さんはたった一人の私の家族だ。父さんも母さんもいないこの世界で唯一の血縁者。…いや、ある意味アイツも血縁者になるのか?心底嫌だな。
と、何を考えているのか分からない死んだ瞳と貼り付けた笑みがデフォの男を思い出して、ちらりとウルド様を見上げる。
彼の方がよっぽど誠実そうな、あるいは真面目そうな感じがする。
あんな男が同じ位の兄弟だなんて…私なら絶対嫌だ。でもきっと、アイツは特別なのだろう。
"漫画"ではそういう素振りがあった。


『…』


そう、"漫画"ーこの世界はそれだ。その世界では、私は…一瀬グレンには妹なんて居なかったのに。なのに私は彼の妹として誕生した。何故私なのか。何故私はこの世界に来てしまったのか。それも結局、物語とは殆ど関わることもない立ち位置でいる。このまま私はロシアで、誰にも知られることなく死んでいくのだろう。…なんて無価値な存在だ。

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作者名:レイ | 作成日時:2021年5月2日 22時

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