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ザッて誰かがわたしの目の前に座り込んだ。
「Aちゃん、コケちゃったの？
…あ〜、靴紐はちゃんと解けてないか、履くときに確認しなきゃっていつも言ってるでしょ？もう！
ちゃ〜、左足を出して？」
「…ジョンウ？」
何が起きてるのか分からない。
ここはまだ、公園に行く途中の道で。
実家からもわたしの家からも離れた場所なのに。なんで目の前にジョンウが見えるんだろう。視界は涙で滲んでいるし、ホンモノじゃないかもしれない。ていうか、たぶんホンモノじゃない、今日は厄日だし、ジョンウらしき人は平気な顔してわたしの靴紐を結び直している。
「よくできました。
ちゃ〜右足も確認してみようか、って、
泣いてるの！？どうして？え？どうしよう」
右見て左見てわかりやすくあたふたしているジョンウ。
「そ、そんなに痛かった？
待って、僕薬買ってくるから、？」
立ち上がったジョンウの腕を掴んだ。
「…Aちゃん？」
「…行かないで、…行かないでよ
いつの間にか隣にいたのに勝手に居なくならないで」
ジョンウは目を見開いて、ものすごい速さと強さでわたしを抱きしめた。
「…それってどういう意味で言ってる？」
「え？」
どういう意味…考えたこともなかった。
ただジョンウがいなくなるのが嫌で、これはみっともない執着心ってやつ？
「…分からないんならいいや」
びっくりしたよね、ごめん、ってジョンウがわたしを解放した。
「もう居なくならない？」
「ばかだなぁ、
先に居なくなったのはAちゃんのくせに」
帰ろうっていつかみたいにジョンウが首を傾げて言った。
「…泣いたの？」
「それもAちゃんね」
「だって、ジョンウ、目がきらきらしてる」
太陽の光を受けて輝く水面みたい…
「そりゃあ、世界でいちばん大切なものを目に写しているもの」
「？…それって」
「いいから帰ろう、」
「痛っ」
「ごめん！！」
ジョンウがわたしの手を取ったら擦りむいた手のひらがあたって痛みが走った。
「大丈夫？」
あたふたするジョンウを見ていたらだんだん笑えてきた。咽び泣きみたいな声が出る。
「えぇぇ、そんなに痛かった？
…って笑ってるんじゃん！！」
もう、なんでよ〜ってジョンウも笑った。
「ジョンウ見てたら、なんか痛くなくなった。
こころも、からだも。
…ありがとう」
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作者名：mawol | 作成日時：2022年9月2日 19時
