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小学生のとき、帰り道以外で1回だけジョンウと話したことがある。
「Aちゃん、左手見せて！」
「左手？いいよ、…痛っ」
差し出した左手をぐりんって外側に向けたジョンウ。
「ふぅん。Aちゃんは2本だね」
「何が？」
「ここ、小指の線と太い線の間の線。
Aちゃんは2本」
「ほんとだ。2本ある」
「でしょ」
えへへって得意げに笑ってた。
「で、なんなの？これ」
「ないしょ〜！！
ジナー、遊ぼー！！」
結局なんなのか教えてもらえずに、友だちと遊びに出ちゃったし。
ちょうどジョンウがわたしのこと好きなんじゃないか説がではじめた頃だったから気になってしょうがなかったのに。
だから覚えているっていうのもあるけど、思い出させたできごともある。
高校のとき、調理実習かなにかで怪我したわたしをジョンウが保健室まで連れて行って手当てしてくれた。
「ちゃー、指曲げたり伸ばしたりしてみて
きつくない？」
ジョンウがここまで上手に傷の手当てができるとは思わなかった。
「きつくない、ありがとう」
「ん、よく出来ました」
手当ては終わったのに手を離してくれないジョンウ。
「ジョンウ、手…」
「ん、ちょっと待ってね」
そのまま、グッとわたしの手に自分の顔を近付けたから、心臓が止まるかと思った。
「うんうん、変わってないね」
「なにが？」
「ほら、ここの線。
昔、話したの、覚えてない？」
「んー、2本あるとかのやつ？」
「そうそう
変わってないね〜、良かった」
この線って何の意味があるんだろう…
「ねぇ、僕のも見る？」
スっと差し出された白くて指はもちろんだけど、手のひらまで長いような華奢で綺麗な手。
「僕はね、4本なの。
4本目を誰が埋めるかは昔から決まってるんだ
でも、1本目から3本目を先に埋めないと4本目は埋まらないでしょ？
だから先に埋めたの。
そろそろ3本目は埋め終わるかな」
「…なんのはなし？」
「この線の話。
Aちゃんも1本目は誰で埋めてきてもいいけど、勝手に埋め終わっちゃダメだよ。
2本目の人が困るからね」
알았지 ？(わかった？)って首を傾げるジョンウ。
全然意味がわからないけど、わたしの顔を覗き込む瞳の深さが怖くて、うん、と頷いた。
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作者名：mawol | 作成日時：2022年9月2日 19時
