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「A、起きて。」
スキー場に着いて、隣で爆睡していたAを起こす。
「え、もう着いたの？意外と早いね。」
…君、眠っていたからね。
受付でリフト券を買って、周りを見渡すと、Aがいない。
すぐ、どっか行く…
はぁ、とため息をついて姿を探しはじめると、
「ごめんごめん！日焼け止め忘れてたから。」
おぉー、大事だね。
ウェアを借りて、板も借りて、準備運動もして。
「一発目からリフト乗る？」
まじかよ。
「僕、1年ぶりなんだけど。」
「わたしも。」
「…怖くない？」
人多いし、と付け加える僕に、
「全然？」
逆に、なにが怖いの？な、A。
「Aが乗りたいんなら乗ってくれば？
僕、慣れるまで下で滑っとくから。」
さすがに、置いていかないだろう、と思って、賭けで言ったのに、
「あ、そう？じゃあ、行ってくるわ。」
僕が、あれ？ってなっている間に、手際よく板を履いて、颯爽とリフトの列に向かっていった。
嘘でしょ。
呆然とAを見送って、せっせと板を履き、よいしょ、よいしょ、とコース終盤の緩やかな坂を中間くらいまで登り、さぁ、滑ろう、と構えたところ、
サァー、と僕の正面に入り込んで、キュッ、と停止した女性。
こういうスキーヤーがいるから危ないんだ、と思えば、
「どう？慣れた？
今日の雪、めっちゃいいよ！
晴れてるから、昼過ぎたらツルツルになっちゃいそうだけど…
その前に心置きなく滑っとこうね！」
ゴーグルをあげて、ニカッと笑い、またゴーグルを付けて、颯爽と滑り降りていった。
紛れもなく、Aである。
所々、器用に人を避けながら、どんどん小さくなるAを見て、小さくため息をつき、脚に力を入れて、ゆっくりと滑り出した。
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作者名：mawol | 作成日時：2022年2月17日 2時
