48．真実の開示 ページ48
チーノの持つ薄明かりを頼りに進むと、あっという間に目的地へ辿り着いた。
木造の隠し扉の向こうからは複数人の話声が聞こえてくる。その中でも一際煩く喚いているのがギリアンだった。
「Ｆ国は到着したか？！」
「只今、国境近くで交戦中との報告が」
「くっ、いくつかの部隊を率いて援軍に向かわせろ！」
短く返事をして一人の足が遠ざかって行った。
扉が閉まる音が聞こえると、もう一つの足音が若干近付いて乱暴に椅子へ座る音が聞こえた。
「昨日、宣戦布告して今日には兵がここにいるなんて一体どうなってるんだ……！」
そりゃ、先に軍を配置してから宣戦布告したからな。
想像通りに動揺しているギリアンに呆れつつ息を潜めて中の人数を確認すると、ギリアンの他に護衛らしき気配が三人。同じように探っていた他の人へ目配せすれば無言で頷いてくれた。手で指示をして三人に後ろへ下がってもらい、私も扉から少し下がってから手でカウントを始める。
３、２、１
思いっ切り足を振り被って隠し扉を破壊する。
目を丸くしているギリアンの前に屈強な男達が立ち塞がった。しかし、そのまま声をあげさせる暇無く意識を沈める。廊下の方を見れば、既にチーノが扉前を陣取って誰もいないことを確認していた。
「き、貴様らどうやってここに……！」
「ここの隠し通路すら知らなかったなんて、この屋敷の主とは思えませんね」
刃を向けて冷たく返せば、情けない小さな悲鳴をあげる。
「ここで貴方の命を奪ってもいいが、何か言うことはあるか」
「お、俺を切り捨ててもF国がお前達を……！」
「それは無いやろ」
「薄っぺらい利害関係だけで結ばれとったお前が使えないんやったら、それこそ見放すやろ」
「ぐ、ぅ……」
「さて、言うことはそれだけか？」
白刃をさらに近付けると、ギリアンは慌てながら言葉を連ねた。
「ま、待て！"あの時の"犯人を知ってる！！」
「それって、Aの……？」
「そ、そうだ！知りたいだろう！？実の両親を手にかけた奴を！！」
他の3人が固唾を飲んでいる中、私が何も言わないでいるとそれを肯定と受け取って話し始めた。
「お前達が協力者として情報を共有していた奴がいただろう？あいつ、あのジイドって奴がやったのさ！！驚いただろう？それもそうだ、奴はお前達を裏切っていたんだからなぁ！！」
勝ち誇った笑い声を響かせるギリアンの姿に溜息を溢す。
「私とお嬢様が、本気で知らなかったとでも？」
目を見開く姿は滑稽だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 973人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ニコ(プロフ) - 白夜（ハクグン）さん» 温かいお言葉をありがとうございます!!おかげで創作意欲が取り戻せましたw無理をしない範囲で物語を進めていきますのでお楽しみに。 (2020年11月14日 16時) (
レス) id: 531ac8166f (このIDを非表示/違反報告)
白夜（ハクグン）(プロフ) - 初コメ失礼します！騎士さんとお嬢様が大好きすぎてもう、、、すごく読んでて楽しい作品です！応援します！あ、これからも、です！最近色々問題が多いので、お体にも気をつけて、、、無理せず頑張ってください！ (2020年11月13日 12時) (レス) id: d2ad143a92 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - Ｒ_さん» ありがとうございます！そう言って下さる方がいるだけで頑張れます……！最後までニヤニヤ出来る作品を目指しますw (2020年5月18日 9時) (レス) id: 531ac8166f (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ_ - 初コメ失礼します！！ とても面白くてニヤニヤしながら拝見させて頂いています(((変質者))) この作品大好きっす…！ 応援してます…！！ 更新、無理しない程度に頑張ってください…！ (2020年5月18日 1時) (レス) id: 882f22aeaa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ニコ | 作成日時：2020年4月13日 23時
