30．白にも黒にも見える ページ30
「成程。でしたら、私はここの管理も任されていますので、もし必要な資料などを仰って頂ければすぐにお持ちしますよ」
「ご親切に、ありがとうございます」
「私はあちらにいますので、御用の際はお声掛け下さい」
そう言って、エーミールさんはカウンターの方へ座った。
私はこの国に関する本をいくつか持って近くの席に座り、早速資料を読み始める。
それからは静かな時間が過ぎていった。
ある程度、資料を読み終えて伸びをする。
同じ態勢でいた体からは小気味いい音が聞こえた。
(想像通りの内容が殆どだったけど、結構意外な事も知れたな)
外交官の巧みな話術は多くの同盟国を得ていたが、多くの戦争も生み出していた。
戦場では力任せに捩じ伏せているのかと思えば、綿密に練られた様々な奇策により得られた勝利だった。
他国からの観光客や目には見えないサイバー攻撃による被害は一切無く、むしろそれを引き金に戦争を起こしていた。
勝手に「戦争国家だから力押しの戦法」だと思っていると簡単に足元をすくわれてしまうだろう。
(やはり、一筋縄ではいかないな)
今後の行動には気を付けようと決めて、本を元の場所に戻そうと立つ。
「もう読み終えたんですか？」
何故か近くに座っていたエーミールさんが話し掛けてきた。
「はい」
「では手伝いますよ」
私が返事をするより速く、本をいくつか取られてしまった。
「アイラさんもAさんも勤勉で大変素晴らしいですね」
本を戻しながら鼻歌でも奏でそうな程、嬉しそうなエーミールさん。
「つい教鞭を執ってしまいそうです」
気持ちが昂ったのか、口から零れたその言葉を私は拾い聞いてみた。
「エーミール様は教師を？」
「ここに来る前の話ですけどね」
照れ臭そうに笑うその顔には、僅かに寂しさも垣間見える。
「だから、遠慮なんてしないでなんでも聞いてください。答えられる範囲でならお答えします！」
「ありがとうございます」
天然なのか態となのか判断に困る言い回しに内心で頭を傾げつつ、常備している懐中時計を取り出す。
戻るにはまだ早い時間だった。
どうせなら気になる本でも好きに読んでみようと、さっき見ていたのとは違う本棚へ向かおうとして足が止まる。
「Aさん？どうかされましたか？」
「……いえ、私としたことがまだ仕事が残っていたのを思い出しまして。これで失礼させて頂きます」
「そうでしたか」
「また改めてお礼に伺います」
一礼して書庫から退出する。
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ニコ(プロフ) - 白夜（ハクグン）さん» 温かいお言葉をありがとうございます!!おかげで創作意欲が取り戻せましたw無理をしない範囲で物語を進めていきますのでお楽しみに。 (2020年11月14日 16時) (
レス) id: 531ac8166f (このIDを非表示/違反報告)
白夜（ハクグン）(プロフ) - 初コメ失礼します！騎士さんとお嬢様が大好きすぎてもう、、、すごく読んでて楽しい作品です！応援します！あ、これからも、です！最近色々問題が多いので、お体にも気をつけて、、、無理せず頑張ってください！ (2020年11月13日 12時) (レス) id: d2ad143a92 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - Ｒ_さん» ありがとうございます！そう言って下さる方がいるだけで頑張れます……！最後までニヤニヤ出来る作品を目指しますw (2020年5月18日 9時) (レス) id: 531ac8166f (このIDを非表示/違反報告)
Ｒ_ - 初コメ失礼します！！ とても面白くてニヤニヤしながら拝見させて頂いています(((変質者))) この作品大好きっす…！ 応援してます…！！ 更新、無理しない程度に頑張ってください…！ (2020年5月18日 1時) (レス) id: 882f22aeaa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニコ | 作成日時：2020年4月13日 23時
