188.いない ページ41
「杏っ!」
振り返って、追いかけようと手を伸ばそうとすると、私たちと同じようにお祭り終わりに家路を目指していた人にぶつかる。
「っ!すみません!」
千寿郎くんと慌てて頭を下げて、人の並みを避けながら追いかけた。
左右に開けた曲がり角まで来てきょろきょろと辺りを見回す。
けれど、杏の背中は見当たらない。
それに人が多くて、まだ幼い娘の身長では周りに隠れてしまうこともあり、よく見えない。
「杏っ!何処にいるの?」
「杏!」
千寿郎くんと二人で何度か声を張り上げるけれど、人々の声にか気消されているのか返事はない。
近くを二人で探すけれど何処にも見当たらない。
「杏!返事してっ!」
杏がいなくなった。
杏が迷子になった。
そう理解した途端、さぁぁぁっと血の気が引いていくような感覚に襲われる。
「っ、…どうしよう……杏が!………杏がいない!!」
「姉上!落ち着いて!」
私の肩を揺すって千寿郎くんが目を覗き込んでくる。
「僕はこの辺りを探しますから、姉上は家に帰って父上を呼んで、姉上は家で待っていてください!」
」
「だ、駄目よ……!私の娘だもの!私が探します!!」
「でもこれ以上、外にいると姉上が危険です!!」
彼が力強い目で見てくる。
きっと稀血の私を心配して言ってくれているんだ。
それでも、家で待っているなんて耐えられないと思った。
「母親としてじっとしているなんて出来ない。千寿郎くんお願い!私が残って探すから、お義父さんを連れて戻ってきて!!」
ぐっと、涙が出そうになるのを堪える。
「………分かりました。急いで戻りますから、無理しないで下さいね」
何を言っても聞かないと分かったのか、それとも一刻を争う時に時間が勿体ないと判断したのか。
そう言い残すと千寿郎くんは人通りがまばらになってきた通りを駆けていく。
その背中に「ありがとう」と呟いて私も杏の捜索を再開した。
闇雲に探すだけでは駄目だ。
杏は何処からか聞こえてきた高い音をお囃子の音と思って駆けて行ったのだ。
でも、あの音は一度きりでそれ以降何も聞こえていない。
「杏ーっ!」
名前を呼びながら辺りを見回して進んでいく。
と、風に乗って先程の高い音が聞こえた気がした。
もしかすると、杏がいるかもしれない。
藁にもすがる思いで私は駆け出した。
角を曲がると、道端にしゃがみこんでいる小さな人影を見つける。
「杏!」
名前を呼ぶと小さな影が振り返った。
194人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
義勇と杏寿郎推し - 杏大丈夫か?心配だ!まさか杏鬼に襲われたのか?杏〜〜〜〜! (2021年5月3日 10時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 鮭大根食べたい・・・・・。ムフフしたい・・・・・。ないからさつまいもで我慢した!わっしょい! (2021年4月8日 17時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» こんばんは(^^)なるほど、今度はアオイちゃんですかね。 (2021年4月7日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - あら!正解です!簡単でしたね! 月のものが来てなかったらもしかしたら・・・・・妊婦しているのかもしれないので蝶屋敷に来てくださいね!誰だしょう?しのぶさんじゃありません!蝶屋敷の誰です!答えはコメントで! (2021年4月7日 9時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» こんばんは(^^)ふむふむ。しのぶさん、ですかね? (2021年4月6日 18時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年3月14日 8時