171.しきたり ページ24
「Aさん、この後何かするの?」
不思議そうに首を傾げる蜜璃ちゃんに頷く。
「えぇ。
「観篝?」
「煉獄家は古くから子どもを授かったら、お腹に赤ちゃんがいる間、七日おきに約二時間、大篝火を見るしきたりがあるらしくて」
「七日おきに、二時間も!?」
驚きで口元に手を当てて仰け反る彼女の姿に、数ヶ月前の自分を重ねて笑い事ではないのだけれど、思わず笑みが溢れる。
「最初は私も驚いたわ。夏になって暑くなってきたから、少し辛いけれどね」
「だ、大丈夫なの?」
「えぇ。倒れそうになったこともあるけれど、それからは必ず水を用意して行っているから、何とか。けれど大変で………でも、これをすることで、産まれてくる煉獄家の男の子はみんな髪の色が焔色になるそうよ」
少し苦笑いで告げれば、蜜璃ちゃんが目をぱちぱちとさせていた。
「びっくりするわよね。まだ、男の子か女の子かどっちが産まれるかも分からないのに。でも、代々続いてきたしきたりを私の勝手でやめるのは申し訳ないから………」
告げて笑って見せると、先程まですいーとぽてとに夢中だった杏寿郎さんが口を開く。
「だが、Aが倒れるぐらいなら俺は省略していいと思っているぞ」
「杏寿郎さん、ありがとうございます。でも、出来る限りのことはやりたいから。…気を付けていれば大丈夫です」
彼に笑いかける。
と、ぽこぽことお腹を蹴られる感覚がした。
私を応援してくれているのかしら?
愛しい気持ちが込み上げてくるのを感じながらお腹に触れると、そっと撫でた。
*****
その日の夜。
湯浴みを終えた私は縁側に腰かけて、空を見上げていた。
今日は月がない代わりに星が何時もより綺麗に輝いて見える。
「む!…またそんなところに………」
後ろからため息混じりの声が聞こえて振り返える。
「あ、杏寿郎さん」
「風邪を引くぞ」
声をかければ、彼の上着が私のお腹に掛けられた。
「ありがと………っ、ひゃぁ!?」
お礼の言葉を延べている途中で私の後ろに座り込んだ彼に軽々抱き上げられると、その膝の上に乗せられて、そのまま後ろから抱き締められた。
「何度言ってもAは夜に縁側に出る癖があるから心配だ」
ぎゅぅぅぅっと、どこか切なそうな声が耳元で響く。
194人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
義勇と杏寿郎推し - 杏大丈夫か?心配だ!まさか杏鬼に襲われたのか?杏〜〜〜〜! (2021年5月3日 10時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 鮭大根食べたい・・・・・。ムフフしたい・・・・・。ないからさつまいもで我慢した!わっしょい! (2021年4月8日 17時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» こんばんは(^^)なるほど、今度はアオイちゃんですかね。 (2021年4月7日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - あら!正解です!簡単でしたね! 月のものが来てなかったらもしかしたら・・・・・妊婦しているのかもしれないので蝶屋敷に来てくださいね!誰だしょう?しのぶさんじゃありません!蝶屋敷の誰です!答えはコメントで! (2021年4月7日 9時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» こんばんは(^^)ふむふむ。しのぶさん、ですかね? (2021年4月6日 18時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年3月14日 8時