169.胎動 ページ22
カン、カンッと木刀をぶつけ合う音が響く。
二週間前、杏寿郎さんは新しいお弟子さんを迎えていた。
「まだまだ!もう一度!!」
そんな彼の声が聞こえてくる中、夏の鋭い日差しから逃れるように日陰になっている縁側で私たちは寛いでいた。
「きゃー!今ぽこって!」
「えぇ、蹴ったわね!」
久しぶりに遊びに来てくれた蜜璃ちゃんが、私のお腹に手を当ててはしゃぐ。
夏に入ると私のお腹はすっかり大きく目立つようになっていた。
「まただわ!また蹴っているわ!」
興奮気味に蜜璃ちゃんが言えば、遠慮がちに千寿郎くんが聞いてくる。
「姉上、僕も触れて良いですか?」
「えぇ」
そっと、私のお腹に手を伸ばす千寿郎くん。
ぽこぽこと伝わってくる振動に彼の顔が綻んでいく。
「凄いです…!」
「ふふふっ、最近よく蹴るようになってきたの」
存在感を懸命に訴え始めた自分のお腹を見つめる。
ぽこぽこと蹴られるたびにお腹もぽこっと動く。
何だか、自分の体じゃないみたいな不思議な感覚だった。
まぁ、この中に子どもが入っているのだからある意味そうなのだけれど。
「打ち込みが甘くなってきてるぞ!」
また稽古場からそんな声がして、三人揃ってぴくっと目を見開いた私たちは顔を見合わせて笑い合う。
「懐かしい〜!私がここにいた頃を思い出すわ」
「あの時は兄上と蜜璃さんと僕と三人で稽古していましたからね」
「久しぶりに私も手合わせして貰おうかしら」
「そうね、それがいいと思う。新しいお弟子さんはもうヘトヘトみたいだから、少し休ませてあげないと」
杏寿郎さんの稽古は元気な蜜璃ちゃんですらヘトヘトになるような稽古だ。
新しいお弟子さんは彼女より体力がないので尚更だった。
「僕、お茶を用意してきます」
「えぇ。じゃあ、私たちはお弟子さんを助けてくるわ」
立ち上がって蜜璃ちゃんと共に稽古場へ向かう。
「申し訳ありません!もうこれ以上は無理です!お世話になりましたぁぁぁ!!」
急にそんな言葉が聞こえてきた。
ガラッと勢いよく開いた扉から、お弟子さんが出てくる。
驚く私を見つけて、その目が大きく見開かれるとバッと頭を上げられた。
「俺やめます!奥さんのご飯、とても美味しかったです!今までお世話になりました!!」
「え?……あの、急にどうしたの?」
「すいませんでしたぁぁぁ!!!」
そんな声と共に彼は走り去っていく。
一体何が………?
そう思っていると杏寿郎さんも中から出てくる。
194人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
義勇と杏寿郎推し - 杏大丈夫か?心配だ!まさか杏鬼に襲われたのか?杏〜〜〜〜! (2021年5月3日 10時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - 鮭大根食べたい・・・・・。ムフフしたい・・・・・。ないからさつまいもで我慢した!わっしょい! (2021年4月8日 17時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» こんばんは(^^)なるほど、今度はアオイちゃんですかね。 (2021年4月7日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - あら!正解です!簡単でしたね! 月のものが来てなかったらもしかしたら・・・・・妊婦しているのかもしれないので蝶屋敷に来てくださいね!誰だしょう?しのぶさんじゃありません!蝶屋敷の誰です!答えはコメントで! (2021年4月7日 9時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» こんばんは(^^)ふむふむ。しのぶさん、ですかね? (2021年4月6日 18時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年3月14日 8時