真っ直ぐに愛【煉獄杏寿郎】

167.風邪？ ページ20

季節はすっかり春になった。

寒い冬が終わって、ぽかぽかと温かくなってきたので随分過ごしやすい。


それなのに…………


「うーん…」

最近どうも調子が悪い。

風邪の引き始めかしら？


まだまだ気を付けないと駄目ね。

寝起きにそんなことを思いながら、布団から体を起こす。

杏寿郎さんは一昨日からから任務に出ていて、家にいないので布団から出るのも容易い。

彼と一緒に眠る日は大抵目が覚めると抱き枕にされているので、中々抜けられないのだ。

嬉しいけれど、少し困る。
でもそれがないと、それはそれで寂しく感じるので自分でも矛盾しているなと、可笑しく思う。


着替えを済ませて台所へ向かう。


暫くしてやってきた千寿郎くんと共に朝餉の支度をしていく。


少しして釜で炊いているお米の香りが漂い始めた時、それは起こった。


「っ！………うっ！」

いつもはいい匂いに感じるご飯の香りが、今日は気持ち悪い。


「姉上、大丈夫ですか？お顔の色が悪いようですが………」

口元を押さえて立ち尽くしていると千寿郎くんが心配そうに覗き込んでくる。

「………ごめんね、ちょっと急に気分が悪くなっちゃった。…最近、調子悪かったから風邪かさしら？」

「僕一人でも大丈夫ですから、少し休んでいてください」

「千寿郎くん、ありがとう…」


好意に甘えてゆっくりとした足取りで台所から出る。

寝室へ向かっていくうちに匂いも無くなって少し楽になった。


私は風邪を引きやすいけれど、吐き気を伴うことは殆んどない。

ご飯の匂いが駄目だなんて………


そこまで考えて、ふと思い出す。


そう言えば、暫く月のものが来てないような？


いつからだったかしら？


寝室の襖を開けながら、私は記憶を辿った。

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