130.出立 ページ32
それから数週間が過ぎ、すっかり冷えてくるようになった頃、その日はやって来た。
「蜜璃ちゃん良く眠れた?」
今日は蜜璃ちゃんが最終選別に向かう日。
私たちは早朝から屋敷の門の前に集まっていた。
「えぇ!バッチリよ!」
元気よく答えた彼女に千寿郎くんが風呂敷の包みを渡す。
「蜜璃さん、これAさんと作りました。蜜璃さんの食事量からすると大した量ではありませんが、空腹は凌げるかと………」
「日持ちするものも少し入っているから、ちゃんと配分考えて食べてくださいね」
「うぅっ………千寿郎くんっ!Aさん!ありがとう!!」
ガバッと彼女が私たちに抱き付いてくる。
「甘露寺。緊張せず、修行した日々を信じろ」
杏寿郎さんが声をかけると蜜璃ちゃんが私たちから体を放して姿勢を正した。
「はいっ!」
「君は膂力がある。呼吸はあまり上手いとは言えないが、君なら下位の鬼は切れてるから問題ないだろう。だが、刀は腕じゃなく全身で振るうものだ!切っ先まで神経を通わせろ。刀を含めて己の体だ。それを忘れるな」
「は、…はいっ!」
勢いのある返事を聞いて、先ほどまでキリッとした表情をしていた杏寿郎さんが何処か優しい眼差しを向ける。
「気を付けてな!」
「蜜璃ちゃん、私たち帰ってくるの待ってるからね!」
ぎゅっと彼女の両手を握る。
「はいっ!」
「蜜璃さんお気を付けて」
そっと彼女の手を放して、歩いて行く姿を見送る。
時々振り返って手を振る彼女の手を振り返す。
藤襲山で行われる最終選別。
最終選別の合格条件は、鬼が閉じ込められているそこで七日間生き残ること。
つまり、合格出来なければ待つのは死ということ。
先ほどまでぎゅっと彼女の手を握っていた両手を胸元で握りしめる。
「信じよう。甘露寺なら大丈夫だ!」
不安な私を見た杏寿郎さんにそっと肩を引き寄せられる。
「えぇ。彼女は優しくて強い人ですから。でも、それでも七日は長いです。…帰ってくるのは十日後ぐらいでしょうか」
「そうだな」
きっとお腹を空かせて帰ってくるだろう。
「蜜璃ちゃんが帰ってきたら、沢山ご馳走用意しなくちゃ」
彼女が帰ってくる日のことを思い浮かべて溢せば、杏寿郎さんが微笑ましそうに笑う。
「ははは!それは俺も楽しみだ!」
245人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - 莉子さん» 可愛らしく書けていてよかったです!作者も早く二人には祝言あげて欲しくてうずうずしています!でもきっとあともう少しです(^^) (2021年3月10日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 夢主ちゃん可愛いですね( ´ ▽ ` )早く祝言あげて欲しいですね。。。 (2021年3月10日 20時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» ありがとうございます!夢主ちゃんには甘い煉獄さんを書いてみたら、自然と優しくなりました(*^^*) (2021年3月1日 12時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - 煉獄さん優しい。。( ; ; )月見様の煉獄さん大好きです。 (2021年3月1日 12時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!プロポーズのシーンは悩みながら書いたので、そう言って貰えて嬉しいです!夢主ちゃん、少しずつ成長してます(^^) (2021年2月26日 12時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年2月4日 23時