95.傷の治り ページ46
まだ箱を持ち上げていなかったから良かったものの、もう少しで驚きで箱を落としてしまうところだった。
「えっ!?……え、な、なんですか急に……!?」
なにがなんだか分からなくて声をあげる。
千寿郎くんは目を丸くしているし、甘露寺さんは頬に手を当てて「きゃー!」と顔を赤くしていた。
それを横目に確認して、私も恥ずかしさが込み上げてくる。
「よもや!よもやだ!まさか君から接吻してもらえる日が来ようとは!!」
「っ!!?」
とんでもない発言に顔から火が出そうなほど熱くなる。
なんて事だ…
千寿郎くんも甘露寺さんもいるのにこんなところで、何を言い出すんだ。
「そ、その言い方は少し語弊がありますっ!」
そう私は頬に接吻したのだ。
今のだと唇にしたように聞こえる。
だからなのだろう。
目を丸くしていた千寿郎くんは頬を赤くしてそっぽを向いているし、甘露寺さんもいつの間にか真っ赤になった顔を手で隠している。
「だが事実だ!」
「うぅっ…も、もうっ………!」
「俺は今幸せだ!!」
「わ、分かりましたから………ほ、ほらガーゼ換えますよ!」
私を後ろから抱き締めている腕を掴む。
案外、簡単に離してくれた彼を座布団の上に座らせて机に箱を置くと、彼の腕からしゅるしゅると包帯を解いていく。
恥ずかしさと、二人に対する気まずさとで、目の前にある嬉しそうな顔と目が合わせられないでいた。
シーンっと静まり返った部屋。
「あ、兄上怪我をされていたのですね…」
少しして、気を利かせて口を開いた千寿郎くんのお陰で少しだけ部屋の空気が軽くなる。
「あぁ!だが対したことはない!」
「わ、私、お稽古付けてもらっていたのに全く気が付きませんでした!」
「掠り傷だからな!」
甘露寺さんの言葉にははは!と何でもないように笑う。
「これを掠り傷…というのはどうかと思いますが、傷が深くなくて良かったです。でも怪我の範囲は広いですから、塞がるまで消毒しないと駄目ですよ?」
「あぁ、それなら問題ない!」
「何言ってるんですか………」
言いながら包帯が解き終わったのでガーゼを捲る。
「あれ………?」
傷が浅かったとはいえ、包帯があまり汚れていない。傷口の方も浅いところはかさぶたが出来始めていた。
「もう、治り始めてる。………今朝と全然違う…」
私の声に千寿郎くんたちが杏寿郎さんの傷口を覗き込む。
あまりの治癒力の早さにぽかんとしていると「呼吸で止血したお陰だ」と彼は言った。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時