94.お返し ページ45
「む。今日は随分と甘えるんだな」
いつもとは少し違う私の行動に杏寿郎さんが尋ねる。
「………つい最近まで気が付かなかったんですけれど、寂しかったので………。それに、私は貴方の婚約者だから………駄目、ですか?」
ちらりと彼を見上げると、嬉しそうにその口が綻ぶ。
「駄目なわけがない!寧ろ俺は凄く嬉しい!」
気持ちを表すかのように、ぎゅうっと強く抱き締められた。
「これからは、今よりAとの時間を増やそう!」
口の端を上げて杏寿郎さんがにっと笑う。
彼が私の為に時間を作ろうとしてくれている。
その気持ちだけで、嬉しくてじんわりと胸が暖かくなる。
「…嬉しい。でも、無理はしないでください。杏寿郎さん忙しいしから………」
「無理も何も、これは俺の為でもある!」
「杏寿郎さんの…?」
「言っただろう。『Aが寂しく思ってくれていたように、俺もまた君と過ごす時間が少ないと思っていた』と。寂しく思っていたのはお互い様だ!」
抱き締められていた体を捩って動かす。
私に合わせて抱き締めていた力を緩めてくれた杏寿郎さんを見た。
「ありがとう」
笑い返して、彼の頬にちゅっと口付けた。
「!!」
ぱっと唇を離すと、驚きで固まる彼の姿がそこにある。
「先程のお返しです」
微笑んで一言そう言った。
じんわりと頬に熱が籠っていくのを感じて、呆けたままの彼を置いて私は腕をほどくと立ち上がった。
「救急箱、取ってきますね」
襖を開けて恥ずかしさを隠すように足早に廊下を出た。
すぐ後に「よもや!」なんて彼の大きな声が聴こえてきて、ずっとやられっぱなしだった私は思わず、くすっと笑ってしまう。
愛おしい。
そんな感情が込み上げる。
弾むような気持ちで居間の襖を開けた。
「あれ、Aさん?」
千寿郎くんと甘露寺さんが机でお茶を飲みながら話をしていたらしい。
「あ、兄上と一緒に過ごす約束があったのでは………?」
目をぱちぱちさせて、彼が尋ねてくる。
「えぇ。ついさっきまで一緒でしたよ。杏寿郎さんのガーゼを換えようと思って」
入ってきた襖を一度閉めて仕舞ってある棚に手を伸ばす。
「A!」
名前を呼ばれると同時にパァンと勢い良く部屋の襖が開いたかと思うと、後ろから抱き締められた。
「っ、きゃぁ!?」
ふわりと先程まで包まれていた杏寿郎さんの香りに再び包まれる。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時