91.気遣い ページ42
あれからいつも通り家の仕事をこなして、いつも通り時間が流れていく。
が、しかし私の心境はいつも通りではなかった。
千寿郎くんに今朝の会話を聞かれていたのも驚いたし、気を遣わせたみたいで恥ずかしかった。
何せ、夜になったら“抱き締めて接吻する”と約束されてしまったのだ。
嫌ではないし、嬉しいけれど、宣言されると落ち着かない。
しかも、よくよく杏寿郎さんとの会話を思い出すと、まるで夜のお誘いを受けたかのような言い方に思えてきて、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。
思い出すと頬が熱くなる。
顔が赤くなっていたらどうしよう………
私は自分で思っているより、気持ちが顔に出るのだと最近知ったから、つい鏡で確認してしまう。
洗濯物を干していると、開けられた道場から稽古に励む三人の姿が見える。
ふと、杏寿郎さんと目が合ってしまってにっこり微笑まれた。
予想外の行動に思わず目を逸らす。
駄目だ。
全然いつも通りじゃない!
夕餉の時だってこちらを見て彼がにこにこするものだから、千寿郎くんや甘露寺さんに気を遣われた。
いつもは甘露寺さんが先にお風呂に入るのに、もう少し稽古がしたいからと、先に私に風呂が回ってきた。
せっかく平常心でいようと思っていたけれど、いつもと違うことをしているから、余計に落ち着かない。
湯船に浸かりながらじっとすると、今朝のことを思い出してしまって逆効果だった。
仕方なくさっさと上がって、自室に籠る。
髪の手入れをして、火照った体を冷まそうと障子を開けて縁側に出た。
ひんやり心地よい風が頬を掠める。
空を見上げると、今日は星が沢山見えた。
綺麗だなーと思って暫く眺めていると、隣に杏寿郎さんが座ってきた。
驚いて「えっ?」と声を上げて彼を見ると空を見上げながら言う。
「何度か声を掛けたが、返事がなかったから勝手に入ってしまった!」
「ごめんなさい!気が付かなくて………」
「いや、いいんだ。それより…」
そう言って彼が私の手を握る。
「いつからここに座っているんだ?随分冷えているようだ」
暖かい彼の手が私の手を包み込む。
どうやら思っていたより長く外に出ていたらしい。
「中に入ろう」
「はい」
手を引かれて部屋へ戻る。
私が入ったのを確認すると杏寿郎さんは障子を閉めてくれた。
そのまま手を引かれて、適当な場所に腰掛けた彼に合わせて私も腰かける。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時