54.自覚(※) ページ5
※不快に感じたら2個目の【*****】まで飛ばしてください。
*****
「ごめんなさい………」
そう呟くと、顎を捕まれてぐいっと彼の方に向かされた。
「きゃ…!」
急に体制が変わったことで重心が変わる。
腕で体を支えきれなかった私はそのまま畳の上に倒れ込んだ。
「お前は、俺という婚約者を前にしてまだあの男を想っているのか!」
「っ…!」
私に覆い被さるように覗き込んでくる。
その姿に恐怖で身がすくむ。
言葉が出なかった。
代わりに涙が溢れてくる。
違う。
そうじゃないの。
私は煉獄さんとは何もない。
何も始まってなかった。
でも、それでも…………
今、その人が頭に浮かぶのは────
「いっ…た!!」
首元に痛みが走る。
ぎゅっと瞑った目を開けると、そこ肇さんの姿はなくて天井が見えていていた。
少しして彼がまた視界に映る。
何が起こったのか分からなかった。
先程の痛んだ首元に彼が人差し指を這わせた。
恐怖でひゅっと喉がなる。
「お前は俺のものだ」
勝ち誇ったように笑うその顔が不気味だった。
*****
あの後すぐ、夕餉を知らせに来てくれた使用人のお陰で私は解放された。
それでも体の震えが止まらなくて。
とてもじゃないけれど、このままお義父さんたちとご飯なんて食べられなくて「体調が悪いから」と嘘を付いて部屋に閉じ籠った。
部屋に入って姿見に映る自分が目に入る。
蒼白な顔をしていて酷い。
接吻をされそうになった時、とても怖かった。
そして、首元に赤い痣が浮かんでいるのを見つけてまた泣きそうになる。
あの人は私を支配しようとする。
強引と言う点では肇さんも煉獄さんもあまり変わらない筈なのに、決定的に違うのは、煉獄さんはちゃんと私の気持ちを考えてくれる。
私が嫌だと言えば、それを受け入れてくれる。
それでいて優しく扱ってくれる。
あぁ、そうか。
あの時、煉獄さんと接吻するかもしれないと分かった時、凄く恥ずかしくて。
でも嫌じゃなかったのは────
「A様、お粥をお持ちしました。入ってもよろしいでしょうか」
控えめなハルちゃんの声がする。
でもこんな顔見せられない。
「ありがとう。でもすぐ食べられそうにないからそこに置いておいて」
少しして、カタッと物音がした後、小さな足音が去っていく。
嫌でも私は自覚してしまう。
とみおばあちゃんに聞かれた時から分かっていた。
私はとっくに、煉獄さんのことが好きだ。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時