75.覚悟 ページ26
翌日。
任務がある煉獄さんは帰って行った。
私はまだ怪我が治っていない為、民宿の仕事には入らずに休んでいた。
庭を眺めながら煉獄さんに言われた事をゆっくり思い返す。
婚約者として煉獄さんの家で一緒に暮らす………
ずっと藤の花の家紋を掲げる家の娘として鬼狩り様の世話をしていた私が、鬼狩り様の家で暮らすのか。
何だか実感が沸かない。
つまりはゆくゆくは妻として支えなければならない訳だけれど…………
私に務まるのかしら?
でも私は彼が好きだ。
もっと、一緒にいたい。
会えなかった間、凄く寂しかった。
肇さんの屋敷で過ごしていた間はとても心細かった。
やっぱり、もう答えは出ている。
「見納めかな………」
ポツリと呟く。
一生帰ってこられない訳ではないけれど、彼のもとへ行けば、暫くこの庭を見ないと思うと寂しくなった。
その翌日、肇さんのお屋敷から正式に婚約破談の封書が届いた。
完全にあちらの家とは縁が切れた。
それを見て覚悟が決まる。
だから父と母に自分の意思を伝えた。
凄く喜んでくれた。
兄も静子さんも応援してくれた。
そうして煉獄さん宛に文を送って、一週間後に返ってきた返事に胸が踊る。
*****
文に書いていた通り、煉獄さんは一週間後に迎えに来てくれた。
彼の要望で、出発前に縁側に腰かけて我が家の庭を眺める。
もう桜が咲いていた。
「覚えていますか?あの桜の下でどちらが多く花を掴めるか競ったこと」
大きな目が私を見る。
「思い出したのか?」
「はい。煉獄さんが肇さんの屋敷に助けに来てくれた日に全部思い出しました」
「そうか」
「あの時は楽しかったです」
「もう一度やるか?」
「なに言ってるんです?まだ桜は咲いたばかりで散ってませんよ?それに、もう子どもじゃないです」
むすっと言えば「そうか」と彼が笑う。
「所でまた戻っているぞ?」
「何がです?」
「名前だ!」
「名前………」
「A」
呼ばれて、考え始めていた思考が停止する。
「君は分かっているのか?」
「はい?」
彼が私を覗き込む。
「俺と結婚すればAも”煉獄さん“だ!今から慣らしておかないとな!」
結婚………
そうだ。私は婚約者として煉獄家に行く。
それに彼の御屋敷にいるのは全員“煉獄さん”だ。
「き、きょう、じゅろう、さん……」
何とか彼の名前を口にする。
ぼふっと一気に顔が熱くなった。
「うむ。良くできたな!」
微笑んだ彼は満足げに私の頭を撫でた。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時