71.無茶 ページ22
「それに、俺の父上には『そのうち婚約者を連れて帰る』と連絡してしまったしな!」
「え゛」
それは気が早すぎるのでは…?
「嫌だったか?やめにするか?」
煉獄さんのキリッとした眉が困ったように下がる。
「えっと、嫌…とかではなくて。その…あまりに急なお話しで、頭が追い付かなくて………」
そうは言ったけれど、私の答えは多分決まっている。
それでも受け入れる時間が欲しかった。
私の言葉に煉獄さんが爽やかな笑顔を見せる。
「それはそうだな!早いに越したことはないが、今すぐ決める必要はない。少し考えておいてくれ!」
「分かりました」
つられて私も笑いかける。
何だか嬉しくて彼を見つめていると、ふっと慈しむようにその目が細められた。
「それにしても、君は随分無茶をするな」
「え?」
首を傾げていると、座ったまま畳に手をついて彼が畳の上を移動する。
そして私にずいっと近付いた。
「少女を守る為とは言え、自ら鬼の前に立ち塞がるとは。俺が少し遅れていたらどうなっていたと思う?」
「う…」
「聞けば、君は自分に鬼を引き付けて、一人で逃げ回っていたそうじゃないか」
「ん?」と顔が近付けられる。
「はい…そうです…」
「他者を守ろうとするのは素晴らしいことだ!」
「……はい」
「だが最後、捨て身で前に出たのは良くないな!」
「うぅ…」
「俺は君のそういった他者に対する優しさに惹かれた訳だが、危うく君を失う所だった」
「っ…」
返す言葉が見つからない。
彼の言う通りだ。
目を合わせていられなくて俯く。
私はあの時もう駄目だと、ここで終わると思った。
煉獄さんが来てくれなかったら、私は今ここにいない。
彼の手が私の頬に触れた。
そのままもう片方の手も伸びてきて、頬を包まれると顔を持ち上げられる。
「………ごめんなさい」
私を見つめる瞳が珍しく揺れている。
凄く心配を掛けてしまった。
「それと、助けてくれてありがとうございます」
「あぁ」
こつんと私のおでこに彼の額が当てられる。
「一人で良く頑張ったな!」
「っ!」
まさか褒めてくれと思わなくて視界が歪む。
「もう無茶はしないでくれ」
「はい…っ!」
返事をするとそのまま私に頬を擦り寄せて、今度はそっと抱き締められた。
暖かさに包み込まれて安心する。
優しく背中をぽんぽんされて、その心地よさに目を閉じた。
すると、ちゅっと音を立てて頬に何かが触れた。
驚いて目を開けて彼を見る。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時