61.救いに ページ12
「待てェ!!」
叫びながら窓を突き破って鬼が私たちを追いかけてくる。
ガシャァン!と大きな音が鳴った。
今の音で肇さんやお義父さん達が起きてくれる事を願う。
「きゃー!」っと悲鳴を上げながら、私に付いて来てくれるハルちゃん。
「ハルちゃん!ここからは別れましょう!ハルちゃんはこのまま玄関から屋敷の中へ逃げて」
「はいっ!」
返事を聞いてぱっと彼女の手を離す。
走りながら後ろを見ると鬼が捕まえ易そうと判断したのかハルちゃんの方に向いた。
「こっちよ!!」
声に反応して足を止めた鬼がぐるんっとこちらへ向く。
「貴方が探してる稀血は私よ!」
言い切って走り出した。
鬼がこちらに駆けてきたのを見て庭を大きく回る。
まだ走り出したばかりなのに、もう息が上がる。
走り続けては私が不利だ。
体力作りしておけば良かった…と、私はいつかの時のように後悔する。
雨戸を開けて縁側から屋敷の中へ入った。
自室に駆けて目についた書物や置物を無造作に手に取って奥へ走ると入ってきたときとは違う襖を開けて部屋に入る。
そしてその部屋から勢い良く襖を開けてまた廊下に出た。
「A様っ!一体何が!?」
驚いたような顔の使用人二人と鉢合わせる。
「鬼です!貴女たちもっ…逃げて!」
「鬼?」と首を捻る彼女達の背中をぐいっと押しやって私は反対方向に走り出す。
と、私が逃げてきた部屋からバタバタ音をたてて出てきた鬼。
その人成らざる者の姿に「ひぃっ!!」と悲鳴を上げた使用人に鬼の視線が向かう。
手に持っていた書物を投げた。
鬼の背中にバサッと当たってそれが床に落ちる。
「はぁ、はぁ」と息を乱しながら叫ぶ。
「こっち…っ!!」
鬼が振り向いたのを確認してまた走り出す。
次はどうしよう…
もう何も浮かばない。
これ以上、屋敷の中へ逃げたらみんなを巻き込んでしまう。
私が出来ることなんて限られている。
鬼狩り様はここにいる鬼に気づいてくれるかしら?
誰か、助けに来てくれる?
こんな時に思い出す。
複数ある蓮の花言葉のうちの一つ。
きっと、さっき思い出していたからだ。
『救ってください』
少しは私も貴方のように、誰かの救いになれたかな?
こんな状況だけれど、私はまた誰かに助けて貰えるのだろうか………
そんな、どうしようもなく不安な気持ちが込み上げてきた。
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時