51.採寸 ページ2
「あの、これは一体…」
目の前には私を訪ねてやって来たと言う呉服屋の主人とその従業員の姿。
「旦那様と若旦那様のお申し付けで参りました」
そう言うや否や採寸が始まる。
様々な柄の反物が当てられ鏡越しに写る私を確認していく。
「始めていたか」
部屋の入り口から声がして顔を向けると肇さんの姿があった。
「肇さん、説明していただけますか?」
聞けばふっと笑う。
「来月の集まりにお前を連れていくことになった。茶会だ」
「お茶会ですか」
「お前の持っている着物は上質ではあるが、どれも地味だ。俺の婚約者ならば目立って貰わなくては困る」
「私は、目立ちたくないのですが……」
「俺の隣を歩くのだから、美しいだけでは駄目だ!我が財閥の力を見せ付ける為にもお前には着飾っていて貰う必要がある」
「そう、ですか」
「あとは、せいぜい恥をかかないように稽古に励んでおけ」
冷たく放つと、まだ仕事があるのかどこかへ消えてしまった。
それからも暫く反物が合わせられる。
選り分けられているところを見ると、一応は私に合う柄を探してくれているようだ。
程なくして、肇さんがお義父さんを連れて戻ってきた。
選り分けた反物を二人の前で見せていく。
「こちらはいかがでしょう?」
黒がベースの赤い花をまぶしたような派手な柄を見てお義父さんは首を捻った。
「彼女にはもう少し淡い色が似合うと私は思う」
その声に少し希望が見えて顔を上げる。
そう私は目立たない色合いや淡い色合いの物がいい。
「ですが若旦那様は目立つものをと…」
「似合っていなければ意味がない。それに目立つと目を引かれるは違うと思うが?」
「!」
まさにその通りだ。
低く放ったこの家の主に呉服屋の主人がビクッと肩を揺らした。
この人は今きっと肇さんとお義父さんの板挟みなのだと感じた。
「目利きのいい貴方なら分かるだろう。また、息子に言いくるめられたか」
お義父さんが呆れたようにため息を付くと、慌てて頭を下げる。
「申し訳ございません」
「肇、お前も少しは見る目を養え。彼女を嫁にしたいと言った時、お前も漸くと思ったが、まだまだのようだ」
「父上、俺は隣に目立つ彼女を置いて置きたいのです」
「仕方ない、お前の意見も尊重しよう」
そう言って私を見た。
「だが、Aさんにも選ぶ権利がある。ここから好きなものを一つ選びなさい」
その言葉に驚くと同時に、気遣いに嬉しくなった。
「ありがとうございます!」
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月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!可愛い女の子の弟子が気になって嫉妬しちゃう夢主ちゃん。私もきっと妬いちゃうなと、思いながら書いてました!このあとの展開を楽しんで頂ければ嬉しいです(^^) (2021年1月27日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - またまたコメント失礼します!夢主ちゃんの気持ち分かる〜( ; ; )婚約者になっても一緒に居られる時間少な過ぎて、もっとラブラブして欲しいですねぇ!私も絶対甘露寺ちゃんに妬いちゃうと思う。。あんなに可愛いし笑二人の絡みがもっと欲しいです!( ´ ▽ ` ) (2021年1月27日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 莉子さん» コメントありがとうございます!煉獄さんは簡単に意見や思いを曲げない人だと思ったので、一途になって貰いました!夢主ちゃんの変化に気付いて頂けて嬉しいです!彼女は何も告げずに煉獄さんと一度さよならしたことを後悔しているので、気持ちに素直になり始めてます! (2021年1月19日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - こんにちは^^この作品大好きで、煉獄さんがずっと一途に想っている設定が凄く合ってて、世界観にどっぷり浸かれちゃいます!なかなかすれ違いが長かったので、こうやって両想いになれて本当嬉しいです( ; ; )幸せ!夢主ちゃんも少し変わってきましたよね!ラブラブ (2021年1月19日 19時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 和葉さん» コメントありがとうございます!このあと二人がどうなっていくか、ぜひ楽しみにしていて下さい(^^) (2021年1月15日 19時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年1月3日 14時