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太宰「…この場所、私知ってるよ?」
顔は笑っているが、目の奥は違う。
嫌な目だ、本当に。
あくまで、観客側である太宰を除いた探偵社員にとっては、
善意ある行動だろう。…だけど、違う。
私と太宰の間にある空気が変わったのを、肌で感じた。
A「本当ですか?」
演者と観客。
疑いが伝染する前に、絶つ必要がある。
幸い、気づいているのは太宰だけのようだ。
太宰「えぇ、よろしければご案内しましょうか?」
A「是非、お願いします」
正直、遣わない手はない。
目的地で待ち合わせをしているようなものだ。もし、
万が一、大幅な遅刻とかになれば、怒られるならまだ軽い方だけども、
下手したら、大事(オオゴト)になり兼ねないのも事実な訳で…
片手を握られては、『では、行きましょうか』と先陣をきって案内しようとする太宰に
国木田は制止の声を上げた。不思議に思っている太宰に
『一緒にコイツも連れて行け』と前へ出たのは見知らぬ女性。
………いやいや、誰ですか。貴方は。
身長の小さい女の子。成人してます????
国木田「………夜桜、悪いが一緒に行ってこい」
夜桜「私がですか!?」
明らかな巻き込まれ事故だろ、可哀想に。
…まぁ、それと同時に太宰も驚いて握っていた手を離したくらいだ。
国木田「こいつを一人で行かせるとサボる可能性があるからな、頼んだぞ」
夜桜「わかりました、では行ってきます」
太宰「さぁ、行きましょうか」
胡散臭い笑顔をずっと張り付けた太宰は、私の手を引っ張った。
そんな姿を見つめる"夜桜"と呼ばれた女の子は、後ろを追うようにして着いてきた。
探偵社を出ては、街へ踏み出して数分後のことだった。
夜桜「太宰さん、私にもその紙見せてください」
そう声をかけたものの、『だーめ』と声を上げた。
太宰「というか、夜桜が見てもわからないと思うけど?」
夜桜「そんなの、見なきゃわからないじゃないですか。兎に角、見せてください!」
夜桜ちゃんは太宰の持っている紙を取ろうと手を伸ばしたものの、
身長のある太宰は、紙を天に伸ばしていて取られないようにしていた。
しかも、楽しんでやがる。可哀想に。
下の方で取ろうと頑張っている夜桜ちゃんを尻目に、太宰は『あ、』と声を出した。
太宰「そういえば、お名前を聞いていませんでしたね」
あー、確かに。教えるつもりもなかったしな。
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作者名:松城美樹 | 作成日時:2022年5月29日 22時