甘口ポークカレー ページ9
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私のものに加えて、
もう３皿、カウンターに運ばれてきた。
カレー、
カレー、
油揚げ。
伏見さんは、
自分と剣持さんの前にカレーを置く。
そして油揚げを、
私の右隣に座るキツネに差し出した。
当たり前のように、
キツネは上品に油揚げを口にする。
彼は、カウンターの奥側、
つまり私の正面に腰を下ろすと、
ニカッと笑った。
伏「さ、そろそろいただこうか。
いっせーのーせ、」
いただきます。
ぱちり、という手拍子のあと、
３人と１匹の声が重なる。
この感じ、
すごく懐かしい。
最近、食事は適当だし、
一緒にご飯を食べる相手もいない。
強いていうならば、
部屋で同居せざるを得なくなったＧから始まる虫位だ。
誰もいない部屋(+Ｇ)で、
深夜に食べるカップ麺ほど、
ぼそぼそと味気ないものはない。
左右、正面に人の気配があって、
笑顔を浮かべているのが分かる。
…なんだか、柄にもなく泣きそうだ。
涙目がバレないように、
そっとうつむいた。
ひんやりと冷たいスプーンに、
逆さまの私が映る。
揺れる瞳と目が合い、
苦しくなる。
気を紛らわせるように、
カレーを見つめ直した。
白いシンプルなお皿
ほかほかと湯気の立つ白米
ごろりと大きいジャガイモ
普段見ているレトルトのものよりも薄い茶色
こちらを見つめ返す角の取れた星型のニンジン
人のぬくもりが感じられる。
握りしめてすっかりぬるくなったスプーンを、
熱々のカレーに差し込んだ。
一口、ほおばる。
まろやかな味が口いっぱいに広がった。
ほろりと口の中でほどける豚肉に、
喉をならす。
甘口のポークカレーだ。
伏「オレ、甘口が好きなんだ。」
えへへ、と照れたように笑う伏見さん。
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作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
