金平糖のレプリカ ページ4
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不思議そうに首をかしげた青年の足元で、
獣の鳴くような声が聞こえる。
ふ、と下を向けば、
先ほどのキツネが青年の足元にいた。
キツネの鳴き声って、
コン、じゃないんだ。
きゅい、みたいな音。
そいつは甘えるように、
額を彼の足にこすりつけている。
『おま、私の財布どこやったんだよ…』
私はしゃがみこんで、
わし、とキツネの顔面を両手で挟んだ。
お前私の財布咥えていっただろ。
逃がさねぇからな。
きっと見つめれば、
キツネはふてぶてしい顔で見つめ返してくる。
剣「あ、その財布ってこれじゃないですか？」
頭の上で青年が言った。
見上げれば、彼は私の財布を持っている。
しゃら、と財布についたストラップが音をたてた。
中学時代、修学旅行先だった京都で購入した、
金平糖のストラップである。
『それです！
ありがとうございます』
完全に青年の存在を忘れてた。
彼とキツネの関係性は分からないが、
きっと彼が拾ってくれたんだろう。
有難い限りだ。
立ち上がって、
私に向けて差し伸べられた財布を受け取るべく、
手を伸ばす。
触れる直前に、
紫髪の青年は少し腕を引いた。
すか、と私の手は空を切る。
…見間違いか。
きっと疲れで遠近感がおかしくなっているのだろう。
いよいよ本格的にヤバくなってきた。
焦りを感じつつもう少しだけ腕を伸ばした。
これなら確実に財布に手が届く。
すかっ、とさっきより勢いよく手が空振りした。
は？？
怪訝な顔で前を向けば、
青年はニコニコしながら、
１歩、私から遠ざかっていた。
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作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
