あの日のカレーライス ページ27
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目を、開いた。
視界に入ったのは、知らない天井。
あたたかいクリーム色にほっと息をつく。
私は今、ふかふかのベッドの上に寝ているようだ。
ちくたくと控えめに時を刻む音。
起き上がろうと身を捩れば、左右から覗き込まれた。
亜麻色と葡萄色の髪が跳ねる。
伏「よかったぁ〜！目ぇ覚めたんすね！」
剣「そのまま死んだのかと思いましたよ。」
当たらずとも遠からずな剣持さんの発言に
私はくすりと笑った。
ほっと息をつく２人。
サイドテーブルにはポカリと冷えピタが置いてあった。
もしかして、
いや、もしかしなくとも看病してくれていたのだろう。
申し訳なく思いつつもお礼を言う。
そんな私を前に、伏見さんと剣持さんは顔を見合わせた。
伏「記憶のカケラ…戻ったみたいでよかったっす！」
嬉しそうに、でもどこか残念そうに伏見さんは笑った。
伏「オレとしては、
"もっとここで生きてほしい"って気持ちもあったんだけどな。」
気づかなければ。
記憶を取り戻さなければ、
ずっとここにいられたかも、なんて。
生きていられたかも、なんて。
剣「記憶が戻ったんなら注文してください。
文字通り、あなたの最後の晩餐です。」
ホントはこの店、
お客の記憶や思い出の食事を提供するレストランなんですよ。
そう言って剣持さんはいたずらっぽく首を傾げた。
晩餐にしては早くないか、と時計を見るも、
時刻は20時をまわっている。
いつのまにやらぐっすりと眠っていたらしい。
記憶。
思い出の、食事。
走馬灯のように
母の手料理や、中学時代友人と食べたジャンクフードが頭をよぎっていく。
でも、
それでも。
『今、食べたいものでもいいですか？』
ぬるくなった冷えピタを額からはがし、尋ねる。
伏見さんはコクリと笑顔で頷いた。
『カレーライス。
２人と出会ったあの日の、カレーライスが食べたい。』
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作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
