キノコみたいな思考 ページ22
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…昨日は、散々な目にあった。
なんだあの先輩。
理不尽が過ぎる。
腹の中で怒りがぐるぐると回って
気分が悪い。
普通、自分のミスを後輩に押し付けるか？
一般的に言えば、
答えはノーだ、絶対に。
年上だからって、
やっていいことと悪いことがある。
倫理観がゴミ。
首裏をがりがりと掻く。
私の爪に削られた首がじわりと熱を持つ。
しかし私の気分と、
私が朝練に行くかどうかは
全くもって関係がない。
仕方がないので、
現在私は朝練への道を歩いている。
朝とは言え、
日が昇る前は薄暗い。
自分の足が地面を蹴って進むのを見つめる。
ざり、ざり、と重い足取りで。
それでも確かに前に進んだ。
少ないけれども、こんな朝早くに出歩いている人はいる。
日々に苦しめられる社畜か、
それこそ、私みたいな学畜ばかりだろう。
じめじめとしたキノコみたいな思考をしていたら、
軽快な足音が背後から近づいてきた。
ランニング、だろうか。
あぁ、部活を楽しめているタイプの人間かもしれない。
または健康的な人生を謳歌するタイプの。
相容れない。
少し羨ましさを感じながら、
私はじっとローファーの先を見つめて歩行速度を緩め、
その人物が私を追い越すのを待つ。
タッタッタッタと一定のリズムを刻むその音は、
予想通り、期待通り、
私の横を通り過ぎて…
止まった。
近くに信号などない。
何故止まった。
不審に思いながら、
ゆっくりと私は顔をあげる。
剣「…Aさん？」
首にスポーツタオルを巻いた剣持さんと目が合った。
剣持さん、だったのか。
剣持さんは怪訝そうにこちらを見つめ、
首を傾げる。
彼の頬を汗が一筋、滑り落ちた。
『…あー、奇遇、ですね。』
かさついた喉をしぼって何とか音を出す。
不自然にならないように。
『朝早くからランニングだなんて、私も見習わなきゃなぁ。
あ、ところでこの間のクレープーー』
頭は空っぽのくせに、
言葉はとめどなく口から滑り落ちていく。
剣「…ひっどい顔色。」
彼は少し顔をゆがめると、
きゅ、と私の手首を掴んだ。
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作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
