クレープですよ ページ18
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剣「お待たせしました、クレープですよ〜」
伏見さんときのこたけのこ論争で盛り上がっていたら、
剣持さんが大きなお皿を１つ、運んできた。
伏見さんはこの山か里かの戦いでは珍しい小数民族、すぎのこ村派らしい。
"すぎのこ村"とは、一瞬だけ明治から発売されていたお菓子である。
もはやその存在はネットで語り継がれる都市伝説ーー幻のような存在へと化している。
伏「いっせーのーせ、」
いただきます
私は、微かな音をたてて置かれた皿を覗き込んだ。
大きな白いお皿の真ん中に、小ぶりなクレープ生地がのっている。
皿の上に円を描くように、色とりどりの具材が配置されていた。
白、黄色、赤、ピンク、黄緑。
鮮やかな色に、目を奪われる。
ピンクと赤の比率が高いのはなぜだろう。
伏「とやさんのクレープは、こうやって食べるんだぜ！」
伏見さんは慣れた手つきでひょいと１枚クレープを掴むと、
白っぽいクリームと、黄色い何かをのせて巻き、
ぱくりと食いついた。
ほら、Aさんも。
そう促され、私は手を伸ばし、
クレープの上にクリームと黄緑色のソースをのせた。
大きく口を開けてかぶりつく。
！！
口の中に、爽やかなクリームチーズと、
まろやかなアボカドの甘味が広がる。
目を輝かせてカウンターの向こうの剣持さんを見れば、
黄緑色の瞳が得意げな色を醸す。
剣「いいでしょう。
どれも僕のオリジナルソースですよ。」
甘くて、でもすっきりと優しい味がした。
夜も遅いのに、全く罪悪感が無い。
剣持さんは自分もクレープを手に取ると、
赤とピンクをたっぷりとのせた。
くぁ、と開けられた口から白い歯がのぞく。
その瞬間、ばちっと目が合った。
剣「…そんなに気になるんですか？
仕方ないなぁ、いいですよ先食べても。」
剣持さんは、口の片端をあげて笑った。
はい、とピンクが顔をのぞかせたクレープを手渡される。
『いや、まだクレープたくさんありますけど…』
反射で受け取ってしまうも、
奪おうとしたわけではない、と必死にアピール。
…食い意地張ってるように見えたのか？
剣「そんなもの欲しそうな顔しといて。ほら食え！」
そう言って、別のクレープを作り始めてしまう剣持さん。
戸惑いが隠せず助けを求めて右を向けば、
伏見さんはもごもごと言葉を発した。
伏「いいじゃないっすか、食べちゃえば。
とやさん年下に餌付けしたがるところあるからぁ。」
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作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
