チョコレート戦争 ページ17
.
お品書きに書かれていたのは、
前回同様１品のみ。
それには驚く理由もない。
かわいい小さなカードを投げられた時点でそれはわかっていた。
…かなり上手な狐の絵が描かれている。
すごいなぁ、男子高校生。
私が動きを止めてしまった理由は
上手な絵におどろいたから、でも、
１品しか書いていないから、でもない。
その理由は全く別のものである。
ーー私は甘いものが好きだ。
かなり。
狂おしいほどに。
鞄の中には、必ずと言っていいほどにチョコレートが入っている。
ちなみに私はガーナ派である。
明治派の人間に刺されることを覚悟して言うが、
明治は引きが弱い。
カカオ感が強く、甘みのバランスもいい。
しかし安定感がありすぎて、面白みがない。
対してガーナは甘い。とにかく甘い。
ガツンと来る。
その甘味が中毒性を持っている。
(これは個人の感想です)
明治派の人間が多いため、
ガーナ派は迫害されてきた過去がある。
…そんなことはどうでもいい。
端的に言えば、
私が固まってしまった理由は、
喜びである。
開いたカードに書かれていたのは、
たった４文字。
"クレープ"
あまーいスイーツだ。
しっかし待てよ？
壁にかかった時計を見やる。
ウッディな時計の長針には狐、
短針には薄紫の…タガメ？が描かれていた。
そのタガメは11に近づき、
その背後には狐が迫っている。
つまり11時直前であった。
この時間に甘いものを食べていいものだろうか？
深夜にカップ麺を食らう人間が何を言うかと
思われるかもしれないが、
それとこれとは話が別である。
麺と甘いものだったら、
罪悪感が桁違いだ。
甘いものを深夜に食べる罪悪感は半端ではない。
食べたい、食べてはいけない。
葛藤にさいなまれた私に構うことなく、
伏見さんはあの日のように、
私の鞄を奪う。
伏「なぁに固まってるんすか！
早く食べましょ！」
カウンターの前で振り返った伏見さんは、
ぱちりとウインクをした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
