おまんじゅうかも ページ15
.
何度も繰り返される、
レバーを回すような手の動き。
一体、何を示しているのか。
先ほどよりも上機嫌に、
ニコニコな笑顔を浮かべる伏見さん。
その視線は、
ある一点に注がれている。
不思議に思いながらも、
伏見さんの視線の先に顔を向けた。
そこにあったのは、
虹色の光を放つーーーパチ屋。
私はその目に優しくなさそうな虹色の輝きと、
大自然の産物、虹を
間違えたらしい。
じゃらじゃらと玉の吐き出される音と、
重低音が耳に届いた。
我ながらテンパりすぎだと思う。
伏「いやぁ、この"虹"は最高っすよねぇ！」
うんうんと頷きつつ言われる。
完全に私の見間違いを、
小粋な比喩だと思っている顔だ。
小粋ではない。
それどころか品がない、まである。
しかも、私は未成年である。
パチ屋には入れない。
『…ッスーー、
まだやったことないんでわかんないっすね。』
またまたぁご冗談を、なんて返された。
逆に私は法を破ってパチスロにいそうなJKに見えたんだろうか。
心外な。
そうこうしているうちに、
神社にたどり着く。
伏「今日の料理担当はとやさんなんだぜ。
楽しみにしててくれよな！」
おもむろに傘を閉じる伏見さん。
見上げれば、
雨はいつの間にか止んでいた。
雲一つない闇夜に、
満月が浮かんでいる。
綺麗だなぁ、おまんじゅうみたいで。
彼は大きな歩幅で１歩前に進んだ。
そしてくるりと振り返り、
私に手を差し伸べる。
ふわりと、
しっぽのように結ばれた髪が揺れた。
金茶色の瞳が細められる。
伏「１名様、ご案内っすよ〜」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 258人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まつくぐり | 作成日時：2023年4月30日 21時
