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次の日の朝一番で、私は藤井さんの病室を訪ねた。





こんこんっ、とノックをすると





「どうぞー」という返事が返ってくる。
























大きく息を吸い、ドアを開けた。





ベッドに上体を起こして文庫本を読んでいた藤井さんが、





私に気づいて微笑んだ。






















「来たんやね」


「...はい」















この人には敵わないなぁ。





私が謝りに来ることまで、見透かしていたなんて。





一息に言う。
























「ごめんなさいっ、」


「私ずっと大人ぶってただけで、」


「でも本当は子供で、」


「でも認めたくなくて、」


























頭を下げたまま言葉が続かなくなる私に、





近づいてくる気配がした。





頭が抱えられ、一定のリズムで優しく叩かれる。





そのリズムが、大事に扱われているのを示しているようで、





涙が溢れて止まらなくなる。





私が落ち着くまで、藤井さんはそのまま待っていてくれた。























これだけ泣いたのは、目を覚ましてから初めてだ。





ようやく落ち着いた顔を上げると、





藤井さんは案外と真剣な顔をしていた。
























「約束してや」


「...なにを、ですか?」


「もう、溜め込まないこと」


「見てるこっちが危なっかしいねん」


「思ったこと、すべてに素直になること」


「分かった?」

























その言葉も顔も、全てが優しくて温かくてまた一筋、





涙が頰を伝った。

















「ありがとう...ございます」













他人でしかない私なんかに、





家族や恋人に接するように優しくしてくれた。





そんな人は私が1人になってから始めてだ。




















中間先生やユラさんは、あくまでも「義務」が入っているのだから。





頼りすぎてはいけないと思ってたけど、





藤井さんにはなぜだか頼ってもいい気がした。












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定世(プロフ) - まあこ。さん» いやいや、お話があるから楽しく生きれますね… はい!ありがとうございます! (2016年12月27日 9時) (レス) id: 0b58e8d564 (このIDを非表示/違反報告)
定世(プロフ) - まあこ。さん» そうなんですね! よかったです!まあこ。さんのお話すきなので、見られなくなるのは寂しくなるので!ありがとうございます。がんばってください! (2016年12月26日 17時) (レス) id: b5f9be7614 (このIDを非表示/違反報告)
定世(プロフ) - 突然すいません(汗) 淳太さんメインのお話をパスワード付きにしていますよね?この作品もされますか? (2016年12月26日 0時) (レス) id: 0b58e8d564 (このIDを非表示/違反報告)
萌衣(めい) - まあこ。さん» これからも友達としてよろしくね。小説もたまに更新してるよ!来てね。 (2016年11月23日 15時) (レス) id: 6ea1bb245f (このIDを非表示/違反報告)
萌衣(めい) - まあこ。さん» 良いんだよ!これからは、気をつけるから! (2016年11月18日 17時) (レス) id: c1b374dcc8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ましろ | 作成日時:2016年10月21日 18時

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