『出会いと始まり』 ページ2
「おかえりなさい……ってどうしたのその子！？」
「浜辺で倒れてたんだ…！声を掛けても返事がなくて…！どうしようミトさん！」
ミト、と呼ばれた女性は緑髪の少年が抱えている少女の姿に驚愕した。
出血こそは殆どないものの、全身傷だらけで意識も失っているようだった。満身創痍とはこの事だろう。
「取り敢えずベッドに寝かせて、お医者さんを呼んできて！」
「分かった…！」
少女を抱えた少年は2階に駆け上がり自室のベッドに少女をゆっくり降ろすと走って外に出て行った。
ミトは意識の無い少女が呼吸をしていない事に気付き、人工呼吸を試みる。
そして必死に人工呼吸を施していると、
『ゲホッ』
「！！」
僅かだが、少女が水を吐き出し咳をした。
そして、それと同時に少年が医者を連れ戻ってきた。
_________________________
「呼吸も脈も正常になったし、一先ずは大丈夫だよ」
「良かった…」
「ありがとうございました…！」
「うん、それじゃあお大事にね」
医者の適切な治療のお陰で少女の命は一先ず救われた。
まだ意識は戻らないが、この調子であれば時期に目を覚ますだろう。
「それにしてもこの子一体どうしたの？何でこんなに傷だらけなの…？」
「俺も分からないよ…人が居ない浜辺で倒れてたんだ…」
「そう…嵐に巻き込まれて流れ着いたのかしら…」
昨晩の酷い嵐をミトは思い出す。
だが、少女の体に刻まれた傷の数々は明らかに昨晩出来たものではない物もいくつか見受けられる。
何かの事件に巻き込まれたのだろうか…そんな事を考えていると、
『んっ…』
ベッドに横たわっていた少女が寝返りを打ち僅かに目を開けた。そしてゆっくりと口を開き喋り出す。
『あれ…ここは…私船の中に居たよね…あれ…？』
目が覚めたら見知らぬ部屋に居た事に少女は困惑した。確かに船の中で寝ていた筈だったが…そう口に出すと側で座っていたミトが声を掛ける。
「あなた浜辺で意識を失って倒れていたのよ」
『えっ、浜辺で？というか、どちら様ですか…？』
「私はこの家に住んでいるミトです。この子はゴン」
「意識が戻って良かった！お姉さんのお名前は？」
『え、あ、Aです…』
「Aさんか！いいお名前だね！」
自分に対し優しく微笑むミトと明るい笑顔を見せるゴンに少女は困惑しつつも何処か安堵感を覚えた。
そしてこの出会いが、少女の運命を大きく変えることになる。
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作者名：抹茶パイン | 作成日時：2019年9月18日 18時
