風邪ひき、お姫サマ。 ページ2
ベットから微かに呻き声が聞こえて振り返ると、苦しそうにもぞもぞ動くAの姿があった。
Aは、昨日から高熱を出して、俺が付きっきりで看病していた。
俺は、この二日間で慣れた手つきでタオルをしぼると、またAの頭にのせた。
すると、うっすらと目を開けたAと目が合う。
その瞳は熱に浮かされて潤んでいて、なんとも心臓に悪い。
ーだめだだめだ、Aが大変なときに。
この二日間で呪文となってしまった台詞を心で唱えて、平然とした顔で声をかける。
「おはよう、大丈夫？A。」
そう声をかけると、こくりとうなずくA。
その仕草が小動物のようで愛おしくなる。
「せっかく起きたし、何か食べよっか。」
俺がそういって離れようとすると、弱々しい手で服の裾を掴まれる。
俺が驚いて振り返ると、今にも泣き出しそうな目で見つめられる。
ーそうだよな、熱だと不安になるよな。
なんて頭の隅では冷静だけど、俺はキャパオーバー寸前。
「A？何か食べないと薬も飲めねぇしずっと苦しいんだよ？」
Aの裾を掴んだ手をそっと触りながら、そう俺が小さい子を諭すように言った。
それでもAは、いやいや、と首を微かにふって、離さない。
その一挙一動が可愛いすぎてどうにかなってしまいそうだけど、苦しそうなAを見ているのは辛いし、虚構手段にでる。
Aの手をにぎって引くと、思いのほかスルッと離してくれて驚く。
ところがAは、一緒に離れた俺の大きい手を小さい手でにぎった。
その感触すらも可愛くて、一瞬動きが止まった俺。
「あのーA？」
情けなく顔が赤くなる俺。
Aは俺の手をきゅっと動かす。
向かった先はAの唇。
いつのまにか指をさす形になっていた俺の指で、うるんだ唇をトントン、と触れる。
ーなんだこれ、可愛すぎかよ…っ
俺は我慢なんてできるはずもなく、そのままぐいっと顔を近づけて思い切りキスをした。
何度も何度も繰り返すうちに、Aが苦しくなったのかぽんぽんと軽く手を叩かれる。
俺ははっとなって唇を離してAをみると、息があらくなって唇の端からはどちらのものか分からないような唾液がたれている。
ーやばい、これ以上ここにいたら、俺は…
俺はAの唇ぺろっとなめた。
「可愛すぎだよ、A。」
そのまま部屋から出ると、しゃがみ込んでため息を吐いた。
「…もう、我慢できないからな。」
今日のおはようは？
「…おはよ、お前、猫みたいに寝るんだな」
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作者名：沢井 | 作成日時：2018年1月2日 15時
