morning kiss5 ページ6
先輩はまた、当たり前みたいに私の唇にキスをする。
心拍数が跳ね上がる。
「合い鍵を渡す前に、はっきりさせておきませんか?私と先輩とでは、【何もしない】の定義が違いすぎると思うんですけど」
昴さんに――先輩に、遠くに行ってほしくなくて、私はいつもの口調に戻す。
「そんなことはない。君を突然襲って食べたりはしない。約束しよう」
「赤ずきんとかハンニバル的な?」
物理的に「人を食べる」話をあえて例に出す。
「ほう、その二つをセットにするとはな。そうだな、どっちかというと――」
先輩はくすりと笑うと、私の耳に唇を寄せ、唐突に扇情的で官能的で絶対に大人向けで、まかり間違っても絶対に金曜ロードショーあたりの地上波では放送できないような映画のタイトルを何本も口にした。
半分くらいは見たことも聞いたこともないけれど、たぶん全部そういうやつ。
「――――的な」
「ちょっと何を言っているのか全く意味が分かりません」
真っ赤になってそんなことを言っても、たぶん説得力はない。
「構わんよ。君がその気になったら全部教えてあげよう」
いつの間にか先輩の口調は私が知っているものとは全然変わっている。でも、それが不自然さを感じさせないほどに、とても、彼に馴染んでいるとも思う。
普段の喋り方がフェイク(偽物)で、こっちがリアル(本物)だと言われたら、信じてしまいそうなほど。
274人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年6月16日 15時