backfire4―沖矢side― ページ49
車を停める前から、揉めている男女がいたことは目についていた。
目隠しをされた女性が1名と、2人組の男。
車を降りたとたんに悲鳴が響く。
ここは日本だし、そもそも今、俺は公にはFBIの人間でもない。むしろ、生存の可能性すら危うい存在なので、偶然耳にした悲鳴を聞かなかったことにするのは簡単だった。
――けれども。
これから警察を呼ぶよりは、多分早くことが片付く。その後の警察の事情聴取に付き合わされることもないだろう。証拠さえ残さなければ。
あの2人組に他に仲間がいるような賢い奴らならこんな杜撰な計画は立てるとは思えない。おそらく刃物程度しか持ち合わせてない男2人から、女性一人助け出すのはわけもない。
米花百貨店、東口非常階段の監視カメラの場所と方向はすべて把握している。カメラに姿が映る前に壊すことも――内ポケットに入れている拳銃を使えば造作もない。
そもそも、いまだに警備員がやってこないということは、リアルタイムで監視カメラを見ている人はいないと考えてよさそうだ。
そのため、非常階段に向かうまでの映像は、ボウヤを通して博士に頼めばなんとかなるはず、とふんだ。
問題はAだ。
待っておけと言ってここで素直に待つわけがない。駐車場に置いておいたら、他の誰かにさらわれないとも限らない。
それに、あの船の中で彼女の手を離したことをあの後ずっと悔やんでいた。今更この手は離さない。
非常用階段に鍵をかければ外からの侵入は防げる。上に上がりながらすべての階に施錠すれば自分より下に誰かが入ってきて彼女をさらう可能性は限りなく低い。
そもそも、ここは地下3階。暴れる女性一人を抱えたあいつらは、現時点ではそこまで高い場所へは昇れてないだろう。
俺は走りながらそう算段を立てると、指紋が残らぬよう上着の上から非常階段のノブを回した。
274人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:まつり | 作成日時:2022年6月16日 15時