rob8―沖矢side― ページ42
「いやあ、参ったよ、この年で強盗に襲われるなんて。
とても大金を持ち歩いているようには見えなかったと思うがね」
教授は大きな怪我をした様子もなく、わざわざすまないねと俺の訪問を歓迎してくれた。
阿笠博士の師にあたる坂井教授のもとに、阿笠博士からの口添えでいれてもらえたのは幸いだった。
俺は論文が入っているCDを手渡しながら言う。
「いえ……。大変でしたね、大きなお怪我がなくて何よりです。
こちら、江戸川から預かってきました。奪われたという論文がはいっています。
兵頭から先生の論文が狙われたとお聞きしましたが、何か大きな発見でもされたんですか?」
そうでなければ荷物を全て奪われたのに、1つの論文だけをここまで気にするのは変だ。
ノートパソコンの中に1つしか論文を入れていなかったとは考えられない。
「いや、まあ……。そこまで大したことはないのだが、そうだな。ちょっとした……発見を。これを形にできることが明確に証明できれば、少しは世間で騒がれることになるかもしれない。
ただ、今後私の力でどこまで実現できるか……。
江戸川さん――彼女の発想は実にユニークだ。切り口が斬新で、普通の視点では得られないものを見せてくれる上にきちんと理論武装してくるからな」
――いったい2人で何をやっていたというのだ。まさか「これまで不可逆と思われたものを可逆にする何か――?――例えば時間の逆再生とか、大人を子供に変えるとか――?」だったりするのだろうか。
だとしたら「黒の組織」の関係者が興味を持つのもうなずける。
「それにしても、彼女は本当に秘密主義なんだね。
君にも何も話してないとは」
「ええ、そういうところも彼女の魅力の1つです」
俺は肩をすくめる。一緒に居る間に論文を書いている様子はなかったし、さすがに寝ている間に、Aのパソコンを勝手に見る気にはなれなかった。
そんなことをすれば、もう、この関係が恋でも愛でもなく、ただのハニートラップに堕ちそうで。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年6月16日 15時