morning kiss4 ページ5
私は大きく息を吸って心を落ち着かせる。
「じゃあ、中身も見てくれますか? せん……昴さんならわかるかも。
私がどこを間違えているのか」
昨日みたいにさらっと、間違えたところを直してくれるかもしれない。
そもそも、この理論は破綻していたから、トムが私に絶望して連絡を絶ったことが理解できるかもしれない。
数年間眠らせていた誤答が正解に変わるかも――
突然、ふわっと背中越しに抱きしめられた。
「やっと名前で呼んでくれた」
その声があまりにも嬉しそうだったから、私は次の言葉が出てこない。
「次は私の秘密を開示します――だから、少しだけ時間をくれませんか?」
「時間?」
「ええ、あとはこの部屋の合い鍵を」
……話が全然見えません。
私は先輩の腕の中でくるりと向きを変えて彼を見上げた。
いつもは簡単に見せることのない、眼鏡の奥のエメラルド色の瞳が今は真っ直ぐに私を映している。
ポーカーフェイスを笑顔で包み込んでいるような、何を考えているかいまいち掴みきれない先輩の表情が、今はいつになく真剣に見えた。
――遠くに行ってしまいそうに感じて、不安になる。
私はぎゅっと彼の背中に手を回す。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年6月16日 15時