revive9 ページ29
昴さんが赤井さんってことになると、私は本人を目の前にあれこれ恥ずかしいことを言っていたのではないか――と我に返るまでそんなに時間はかからなかった。
それに、いくら同じ人って言われても――。見た目も雰囲気もまるで違うのに、即座に対応なんてできるわけがない。
鼓動が煩いし、たぶん顔も赤いはず。
恥ずかしすぎるので、できれば胸の中に顔をうずめていたいけれど、そんなことさせてくれる気は毛頭ないらしく、彼は涙が止まっても私の頬から手を離さない。指先だってまだ、絡めあったままだ――。
「――赤井さんが、生きていてくれて良かったです」
「Aが喜んでくれたのなら、何より」
指先を絡めていない――彼の利き手である左手がそっと私の頭に手を添える。誘われるまま唇を重ねた。
それは同じ人とキスしているのに、違う人と唇を重ねたような感覚で――私をひどく困惑させる。
「A、戸惑わせてすまない――いい子」
それは私が泣かなかったことを褒めてくれているのだろうか。それとも、彼のことを拒否しなかったことに対して――?
ドキドキして、今目の前で行われていることについていくので精一杯なだけなんだけど。
「心配しなくても、配偶者は居ないし――恋人はAだけだ」
――ほんっと、本人の前で私はいったい何てことを言ってたんだろう――。
「私、恋人なんて――」
だから、今年は絶対に恋人なんて作らないって言ったじゃないですか……って、もう、いまさら言ってもあんまり意味がないことは自分が一番分かっていた。
絡めた指をいまだに外さないのも、ここから逃げ出さないのも、キスを拒絶しないのも、たった5日間会えないだけでこんなに淋しかったのも――
彼のことが、好きだから。
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作者名:まつり | 作成日時:2022年6月16日 15時